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自衛隊員 決意と不安 中国地方家族・OB リスクを意識 安保法案衆院通過

 安全保障関連法案が衆院を通過した16日、陸上、海上自衛隊の基地がある呉市、岩国市、広島県海田町の隊員には、任務への決意と一抹の不安が交錯した。「与えられた任務をこなす」と冷静に受け止める一方で「身内が心配している」との本音ものぞく。家族やOBは任務のリスクを心配し、法案への世論の支持が十分でないことを懸念する声もあった。

 護衛艦や潜水艦を数多く係留する海上自衛隊呉基地(呉市昭和町)。この日朝、艦艇勤務の30代男性隊員は法案の衆院通過を見通し「任務がどう変わるかよく分からない。危険度が増すとしても、われわれは決められた仕事をするだけ」と話し、職場に向かった。

 陸上自衛隊海田市駐屯地(海田町)勤務のベテラン男性隊員は「法整備されれば現場で対応する内容も幕僚監部から指示が来る。急にリスクが高まったり、仕事が変わったりはしないだろう」と見通す。「外国の部隊と交流しながらの任務は意義深い」(海田市駐屯地の男性隊員)との声もある。

 一方で、家族の心境を察する隊員も。海自呉基地の30代男性隊員は「新法で隊員が危なくなるというイメージが先行しがち。妻が不安を感じているようだ」と打ち明ける。

 兄が海自呉基地の幹部という呉市の40代男性は「若い隊員を任務に送り出す立場。今朝、出勤前に車の中でじっと考え込む姿を見た。声を掛けられなかった」と表情を曇らせた。夫が海自岩国基地(岩国市)に勤務する岩国市の40代主婦は、戦闘に巻き込まれるリスクに関し「想像したことがなかった。実感が湧かないが、家族として不安は強い」と明かす。

 自衛官は国内外の情勢に応じて変わる任務に対応してきた。海自岩国基地の隊員の夫を持つ岩国市の40代の妻は「世界で争いが起きている時に日本が協力しないのはどうかと思う。不安はあるが腹をくくる」という。

 反対の声が残る中で法案は衆院を通過。呉市の60代の自衛官OBは「国を守る仕事。世論の支持を十分に受けない中で任務に就くのは気の毒」と後輩を思いやる。広島市安芸区の50代のOBは「リスクは高まるだろう。万が一の際の家族への支援を確かなものにしてほしい」と求めた。

(2015年7月17日朝刊掲載)

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