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野党反発 与党は理解 安保法案衆院通過 5県党組織 徹底議論望む声も 中国地方

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が衆院を通過した16日、中国地方5県の各党県組織は、野党側が法案の違憲性などを訴えて一斉に反発を強める一方、与党側は「論点は出尽くした」などと理解を示した。与野党を問わず、国民理解が十分進んでいないことを懸念し、引き続き徹底した議論を求める意見も相次いだ。

 法案をめぐっては、憲法学者たちが「違憲」と指摘し、国民の間にも反対や疑問の声が根強い。民主党山口県連の小田村克彦幹事長は「立憲主義に反する強行可決。(集団的自衛権の行使要件となる)存立危機事態は曖昧で、今国会で成立することがあってはならない。廃案にすべきだ」と強調する。

 その存立危機事態に代わり、個別的自衛権の範囲拡大を柱とする対案を提出した維新の党。岡山県総支部の片山虎之助代表は「維新案は憲法適合性の観点から自国防衛に徹し、他国防衛は認めない。日米連携の強化にも資する。しかし衆院での審議はわずか5時間と全く不十分だ」と不満をぶつけた。

 生活の党広島県連の佐藤公治代表は「憲法に関わる大切な問題なのに、9条の解釈と運用を曖昧にしたままの審議に終始した」と批判した。

 今後、審議の舞台は参院に移る。社民党島根県連合の細田実幹事長は「どのようなケースで自衛隊を派遣し、武力を行使するのかなど、野党はより具体的な議論で法案の不備を突くべきだ」と注文。共産党広島県委員会の村上昭二委員長は「審議が深まれば、法案の問題点が一層出てくるはずだ。国民の理解が進むほど反対の声は大きくなる」とみる。

 一方の与党は、想定した時間を上回って110時間を超えた国会審議を評価する。公明党広島県本部の田川寿一代表代行は「論点は出尽くし、機は熟したと感じている。時宜を得た妥当な可決だ」とした。

 ただ、安倍晋三首相自身も「国民に十分な理解が得られていない」と認めており、一層の議論を求める声もある。自民党鳥取県連の山口享会長は「時間的には相当、審議された」としながらも「集団的自衛権や後方支援について具体的な説明が少なく、自衛隊員も対応に困るのではないか」と危惧した。

 自民党広島県連の宇田伸幹事長は「戦争に向かうものではなく、戦後日本が守ってきた平和を持続するための法案。国民がきちんと理解できるよう、政府は説明を尽くしてほしい」と要望した。

「熟議必要」「丁寧な説明を」知事ら 安保法案衆院通過 中国地方

 衆院を通過した安全保障関連法案の審議について、鳥取県の平井伸治知事は16日の記者会見で、「日本が平和国家としての地位を国際的に高めたことは国民の誇り。国会は熟議を果たさなければならない」と述べ、参院で法案に関する議論を深めるよう求めた。

 平井知事は「国民の多くが、まだ十分に審議が進んでいないと考えている」との受け止めを表明。今後、参院に移る法案審議について「法律的な課題や外交問題、世界の軍事的な変動要因などをテーブルに上げ、一から議論していくぐらいの根性が必要。そうでないと国民のコンセンサスが得られない」と強調した。

 広島県の湯崎英彦知事は法案が衆院特別委員会で強行採決された15日、「国民的合意に至っているとは言えない」と懸念を示し、政府に対して国民の理解を得るよう求めるコメントを出した。広島市の松井一実市長も同日、徹底した国会審議を求めるコメントを出している。

 島根県の溝口善兵衛知事は16日、「引き続き、国会での十分な審議を通じ、国民に丁寧に説明していただきたい」とのコメントをあらためて出した。(川崎崇史、川井直哉、新谷枝里子)

(2015年7月17日朝刊掲載)

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