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被爆電車が見た広島 広島市南区の加藤さん出版、開業や原爆直後の惨状… もう一つの語り部

 広島市内を走る路面電車の歴史を紹介する「被爆電車物語」を、市こども文化科学館元館長の加藤一孝さん(65)=南区皆実町=が出版した。現役で走り続けている被爆電車の目線から、市電の開業から現在までの広島の歩みをたどっている。(藤田智)

 「はじめまして路面電車651号です」。現存する650形の被爆電車4両のうちの1両である651号が一人称で物語を進める。前半はデルタ地域で困難を伴った開業前の工事の様子や、被爆直後の惨状などについて写真を多く載せながら語っている。

 混乱の中で被爆から数日後に運行を再開した復興の歩みをたどり、子どもや高齢者、身体障害者に配慮した低床車両が走る現代までの時代を追った。

 副題に「もう一つの語り部」と付けた。加藤さんは「広島の街と切り離せない路面電車を通して、街の成り立ちや人々の営みを知ってほしい」と話している。

 加藤さんは、米軍が被爆5日後の8月11日に撮影した航空写真などから原爆投下時の電車の位置なども調べ、執筆した。

 県内の書店で発売している。1620円。

(2015年7月17日朝刊掲載)

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