×

ニュース

日中間の戦争 記憶継承探る 広島 平和学会閉幕

 日本平和学会(会長・佐々木寛・新潟国際情報大教授)の春季研究大会は19日、広島市中区のJMSアステールプラザで分科会やワークショップなどを開催し、2日間の日程を終えた。

 記念講演では、中国社会科学院の孫歌研究員が、日本の国策で第2次世界大戦中に推し進められた満蒙(まんもう)開拓団を例に、日中両国の戦争の記憶の継承をめぐる課題を語った。

 開拓団は終戦前後の混乱で、土地を奪われた側の中国の農民に子どもを託し、多くが残留孤児となった。孫さんは「手を差し伸べられた高齢者も少なくなかった。生活者としての人間愛だ」と指摘。一方、開拓民を多く送り出した長野県では、負の歴史も含めて継承する地道な取り組みがあると紹介した。

 「国家の論理から完全に離れて生きることはできなくても、生活人の立場から歴史と向き合うことが、悲惨な戦争を二度と繰り返さない力になる」とし、日中が歴史認識で歩み寄る土壌となる可能性を示唆した。

 このほか、国会審議中の安全保障関連法案や集団的自衛権行使の動きも踏まえて「平和主義」の意味を論じる部会や、戦争・被爆体験を継承する上での課題を探るプログラムがあった。(金崎由美)

(2015年7月20日朝刊掲載)

年別アーカイブ