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社説・コラム

天風録 「8月6日の空の下」

 すっきりと青空が広がり、山口を除く中国地方の梅雨が明けた。ぱらっと降られたところもあったようだが、いよいよ夏本番だ。熱中症にならぬよう、気象台の注意報や天気図をチェックしなくては▲盛ンニ火事雷発生シ横川方面大雨降ル―。被爆直後の模様を当時の気象台は記す。だが8月6日の夕方から10日余り、全国の天気図で広島は「空白」に。観測は続けたが、無線機が壊れたため東京へ打電できなかった▲きのう暑いさなかに、半地下のコンクリート建物に入ると、ひんやりしていた。広島城本丸の一角に残る中国軍管区司令部「防空作戦室」。昼も夜も敵機に備え、あの朝もB29接近を察知する。8時13分、警報を発しようとしたが…▲「大変です。広島がやられました」。作戦室に動員されていた女学校の生徒たちが、広島壊滅の第一報を発した。部屋から外に出てみると、「いいお天気だったはずなのにうす暗く息もつまるほどの土煙」に包まれた▲作戦室のあの日を、広島城の企画展がたどっている。作戦室への案内も日程に。気象台の日誌類は来月から江波山気象館で見ることができる。70年目の夏、8月6日の空と、きのこ雲の下に思いをはせたい。

(2015年7月21日朝刊掲載)

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