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連載・特集

芸術家の視線の先は 広島・長崎 被爆70周年 戦争と平和展 25日から広島県立美術館 

 芸術家は、「戦争」をどう見詰めてきたのだろうか―。国内外約80人の表現から探る「戦争と平和展」が25日、広島市中区上幟町の広島県立美術館で始まる。

 被爆から70年を迎える広島・長崎の両県立美術館が協力し、両館や国内の美術館・大学が所蔵する絵画や彫刻、写真など計約200点を紹介。近代戦争の始まりともいえる19世紀初頭のナポレオン戦争から二つの世界大戦、そして原爆…。4章構成でたどる。

 ナポレオン戦争時代では、ロマン主義的な手法で英雄像を描いたテオドール・ジェリコーらを紹介する一方、戦争の不条理さを告発したフランシスコ・デ・ゴヤの版画などを展示。勝者の栄光から、戦争の悲惨さに目が向けられ始めた時代を映す。

 兵器の破壊力も大きく変化する第1次大戦期では、前線に赴いたオットー・ディックスや愛息を奪われたケーテ・コルヴィッツらが戦争の実情を伝える。

 未曽有の惨禍を生んだ第2次大戦。パブロ・ピカソの版画やロバート・キャパの写真のほか、国家総動員体制下の日本で絵筆を執った画家たちの作品が並ぶ。橋本関雪や山口県生まれの小野具定(ぐてい)ら日本画家が描いた、時局を反映した作品も興味深い。京都大が所蔵し、通常一般公開されない須田国太郎「学徒出陣壮行の図」のほか、二科展で特選を受賞しながら「退廃不快の印象を与える」との理由で反戦画家とのレッテルを貼られた阿部合成(ごうせい)「見送る人々」も胸に迫る。

 展示のクライマックスは広島・長崎の「記憶」をテーマにした最終章。入野忠芳、平山郁夫、丸木位里・俊夫妻、東松照明ら被爆地ゆかりの作家の表現が、平和の尊さを照らしだす。

 両館や原爆資料館(広島市中区)などでつくる実行委員会と中国新聞社の主催。9月13日まで。会期中無休。前期(~8月16日)後期(8月17日~9月13日)で一部作品を入れ替える。9月20日から長崎に巡回する。=敬称略(森田裕美)

◆開館時間 午前9時から午後5時(金曜日は午後8時)まで。入場は閉館の30分前まで。7月25日は午前10時から
◆入場料 一般800円(600円)高校・大学生400円(300円)中学生以下無料。障害者手帳などを持つ人は本人と介助者1人が半額※かっこ内は前売りと20人以上の団体料金
◆広島県立美術館 Tel082(221)6246

■イベント

①被爆手記朗読劇「夏の雲は忘れない」 7月25日午後3時。俳優高田敏江さんたちでつくる「夏の会」が公演
②記念講演会「描かれた戦争 ナポレオン時代を中心として」 7月26日午後1時半。講師は、千足伸行・広島県立美術館館長
③シンポジウム「戦争画と『原爆の図』をめぐって その政治性と芸術性の問題」 8月1日午後2時半。パネリスト…平瀬礼太(美術史家)岡村幸宣(原爆の図丸木美術館学芸員)大井健地(広島市立大名誉教授)西原大輔(広島大大学院教授)▽司会…谷藤史彦(ふくやま美術館学芸課長)
④記念講演会「〈戦争の世紀〉と葛藤する美術 二つの世界大戦とその狭間で」 8月2日午後1時半。講師は、河本真理・日本女子大教授
⑤特別セミナー「戦時中のファッションを考える」 8月16日午後1時半。講師は、津島由里子・安田女子大非常勤講師
⑥シンポジウム「〈現代〉戦争の表象 絵画/写真/文学が交差する戦場」 8月23日午後1時半。パネリスト…河本真理(日本女子大教授)飛嶋隆信(東京農工大大学院准教授)久保昭博(関西学院大准教授)山下寿水(広島県立美術館学芸員)

※①~⑥の会場はいずれも地下講堂。無料。先着200人
〇被爆体験継承講話「平和の語り部」 8月7、21日、9月4日のいずれも午前11時、1階ロビー。被爆を語り継ぐ会の被爆者が体験を語る。無料

(2015年7月21日朝刊掲載)

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