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連載・特集

正念場の被爆者団体 全国アンケートから <中> 存続への模索 

同じ悩み 組織間連携

 江田島市原爆被害者の会が16日、市内で開いた総会。「このままでは会が消滅してしまう。存続のために他の組織と協力してはどうか」。大原忠会長(74)が切り出すと、出席した会員11人がうなずいた。高齢化で前途を危ぶむ会が、連携相手に選んだのは戦没者遺族でつくる市遺族連合会だった。

互いの行事参加

 8月に開く慰霊祭に遺族会員10人を初めて招待。互いの行事への参加から始め、営みを保つ―。そう思い描く。

 両会は設立の経緯こそ異なるが、会員の減少に悩むのは同じ。原爆被害者の会は1976年の設立当初に比べ8割減った。いま161人が在籍するが、年3回の定例会に姿をみせるのは数人。昨年の慰霊祭には、10人ほどしか来なかった。遺族連合会も会員はピーク時の7割という。

 戦禍を被った会員が助け合い、平和を願う両会の活動には重なる部分もある。双方のメンバーである被爆2世の提案で、連携の動きが加速したという。遺族連合会の御堂岡勝敏会長(71)も「組織は違っても同じ戦争被害者。活動を続けていく手だてを、ともに探りたい」と期待する。

 中国新聞社が日本被団協に加盟、オブザーバー参加する都道府県組織や中国地方5県の地域組織へ問うたアンケートによると、約4割が被爆2世や被爆者遺族の手による存続を望む。2世の加入や組織化はこの10年で進んだが、「40~60歳代は自分の仕事で精いっぱい」との本音も聞こえる。親子関係に頼る継承だけでは行き詰まり、「別の組織に活動を引き継ぎたい」とする意見もあった。

運営基盤を強化

 栃木県原爆被害者協議会は2009年、県平和運動センターに事務局を移し、解散を免れた。京都府原爆被災者の会は公益社団法人にし、事務員を配置するなど、各団体は試行錯誤を繰り広げている。

 東京都原爆被害者団体協議会は被爆者相談業務を都から受託するなどし、運営の安定を図ってきた。業務の担い手として設立した「社団法人東友会」を13年、一般社団法人とし、弁護士や医師、2世たちを会員に迎え入れて基盤を強化。同会主催だった毎年の追悼式典の運営は、都に引き継いだ。

 この在り方を構想した協議会の元会長、故伊東壮さんは、繰り返し説いていたという。「再び被爆者をつくらせないという目的を達成するため、被爆者が最後の一人になっても困らないようにしておかなければ」。心身に刻まれたあの日を語り、核兵器廃絶を訴える被爆者がいる限り、被爆者団体が役目を終えることはない。(小笠原芳、新谷枝里子)

(2015年7月21日朝刊掲載)

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