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「脱原発」めぐり熱い議論 原水禁・協系世界大会

「核兵器全面禁止」 署名推進呼び掛け 原水協閉幕

 日本原水協などの原水爆禁止世界大会は5日、広島市中区の市文化交流会館で国際会議宣言を採択し、3日間の会議を終えた。

 宣言は2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書に盛り込まれた核兵器禁止条約の実現を要求。福島第1原発事故は「安全神話」が欺瞞(ぎまん)だったことを明らかにしたと批判した。その上で「核兵器全面禁止」を求める署名の推進やあらゆる放射線被害者の支援と原発依存からの脱却を呼び掛けた。

 国連のセルジオ・ドアルテ軍縮問題担当上級代表は「皆さんの行動は将来の世代へ重要な取り組みだ」との潘基文(バンキムン)事務総長のメッセージを代読した。6日は中区の広島グリーンアリーナで世界大会を開催。7日からは会場を長崎に移す。


エネ政策転換へ 海外事例を紹介 原水禁分科会

 原水禁国民会議などの原水爆禁止世界大会は5日、広島市で国際会議や広島大会の分科会を開き、「脱原発」をめぐる具体策を討議した。

 国際会議では「エネルギー政策の転換」について、ドイツなど3カ国・地域の海外ゲストが報告した。ドイツ連邦議会議員で緑の党のべーベル・ヘーンさんは、国策で10年前から風力など再生可能エネルギーに転換し、先月に段階的脱原発を盛り込んだ法律が成立した経緯を紹介。「ドイツでは原子力の時代は終わった」と強調した。

 広島大会の分科会の一つは「脱原子力」をテーマに議論。参加者からは「非核宣言」のように「脱原発宣言」を採択する自治体を広げる運動の提案が出た。ほかの分科会では北東アジアの非核化などを話し合った。6日は広島大会のまとめ集会を開く。


福島県民50人参加 事故後や避難生活証言

 広島市で開かれている二つの原水爆禁止世界大会に、福島県民計約50人が参加している。福島第1原発事故で各地に避難している人も多い。事故発生直後の様子から避難生活までの体験を生々しく証言。両大会の「脱原発」をめぐる議論を後押ししている。

 「60年来の友とばらばらになり、息子と行っていた海釣りのポイントも失った。原発は人生やささやかな喜び、希望を奪った」。原水禁国民会議などの世界大会に参加するのは、原発から16キロの楢葉町に自宅がある森田省一さん(61)。5日の分科会で約500人を前に声を張り上げた。

 県嘱託職員の仕事を失い、今は栃木県那須塩原市の雇用促進住宅に家族5人で身を寄せる。東京電力からの損害賠償仮払金100万円は生活費ですぐに底を突いたという。

 「原爆はだめで原発はいいといえるのか」。福島県内で原水禁運動にかかわり「脱原発」を訴えてきた。原発を止められなかったという後悔がうずき、言葉に力が入る。

 一方、日本原水協などの世界大会に出席したのは飯舘村の佐藤みつ子さん(62)。村は、原発から40キロ離れているが、放射線量が高い「ホットスポット」が点在する。小学4年の孫と本宮市で避難生活中。「原爆や被曝(ひばく)についてあまりに知らなかった。勉強しなければ」と初めて被爆地広島を訪れた。

 広島の被爆者や核実験・原発事故の被害者、支援者の意見発表を多く聞いた。「放射線にさらされ、古里を追われたのは自分だけでない」。真剣にメモをとる。(金崎由美、岡田浩平)

(2011年8月6日朝刊掲載)

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