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連載・特集

正念場の被爆者団体 全国アンケートから <下> 裾野の拡大 次代の参加 存続へ光

 福山市霞町の中央公園で19日にあった原爆死没者慰霊碑の清掃活動。被爆者や被爆2世が続けてきた夏の恒例行事にことし、市内にある盈進高の生徒たちの姿があった。

学校と連携協定

 1989年建立の慰霊碑を維持管理してきた市原爆被害者の会が3月末、役員の高齢化を理由に解散。その活動を引き継ぐため被爆2世を中心に4月に発足した市原爆被害者友の会が、賛助団体・個人として募った「ピース・メイト(平和の仲間)」のメンバーだ。

 「被爆者の体験や核廃絶への願いを受け継ぎたいが、被爆2、3世だけで活動を続けても必ず限界が来る。一般市民や学生たちも巻き込まないと」と友の会の藤井悟会長(68)。ピース・メイトは運動の裾野を広げる試みである。

 現時点のメンバーは、この10日に友の会と連携協定を結んだ盈進中高と、盈進高卒業生の福山平成大1年、箱田麻実さん(18)だけ。箱田さんは「被爆者が高齢になった今、若い私たちが主体的に動かなくては」と意気込む。慰霊碑清掃には、協力を呼び掛けるチラシを作ってキャンパス内に張り、学生5人を呼び込んだ。

 盈進中高は今後、8月6日の式典に生徒が参列したり、平和学習で協力してもらったりするという。友の会自体の活動が緒に就いたばかりだが、藤井会長は「若い力は頼もしい」と期待する。

2世がHP準備

 中国新聞社が今月、日本被団協に加盟、オブザーバー参加する都道府県組織や中国地方5県の地域組織に展望を聞いたアンケートでは、約5割の団体が、2世の参画や別団体への活動の引き継ぎを望んだ。「平和をテーマに活動する市民グループとの連携」に力を入れるという団体も約4割あり、多彩な活動を次代に期待する声は高い。

 山梨県原水爆被爆者の会は、被爆体験を発信するホームページ(HP)を2世会員が準備している。中島辰和事務局長(80)は「親世代では思いつかない活動。冊子に比べ、より多くの人に核兵器の恐ろしさを伝えられるだろう」と子世代を見守る。

 正念場を迎えた組織の行く末を案じている三次市原爆被害者協議会事務局長の被爆2世、田口正行さん(58)は一方で、若者や地域と手を携えて存続の道を探る各団体の姿に、光明を見て取る。「放っておけない、と動きだす人が地域にいると信じたい」。そう前を向こうとしている。(小林可奈、根石大輔、野平慧一)

(2015年7月22日朝刊掲載)

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