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社説・コラム

どう見る安保関連法案 歌手・僧侶 二階堂和美さん 武力に頼らぬ姿勢 誇り 

 安全保障関連法案の衆院通過は本当に残念だし、恐ろしい。当日はショックでぼうぜんとしてしまった。しかし諦めるのではなく、声を上げ続けなければいけない。そう自分にも言い聞かせている。

人と人が仲良く

 大竹市出身。1997年からシンガー・ソングライターとして活動し、98年に上京。実家の寺を継ぐため2004年に帰郷した。スタジオジブリのアニメ「かぐや姫の物語」の主題歌「いのちの記憶」の作詞作曲と歌を担当するなど、僧侶を務めながら音楽活動を続ける。

 被爆国として、戦後の外交問題を武力で解決してこなかったのが日本の誇りだ。なぜ今になって武力に頼る発想になるのか。再び戦争に関わる可能性が高まる安保関連法案の成立は、止めなければいけない。

 広島、長崎が被爆70年を迎えることし、「伝える花」という曲を作った。モチーフにしたのは、原爆資料館に飾られているカンナという花の写真。70年間草木も生えないと言われた広島で、原爆が投下されてからわずか1カ月後に花を咲かせた。焦土に咲いた力強い姿に、市民はどれほど励まされただろう。

 曲に「受けた悲しみは決して返しはしない」というフレーズがある。幼稚かもしれないが、人と人が仲良くすることが世界平和の基本だと信じている。他国の戦争を手伝って、自分の国も守ってもらう。安倍晋三首相は「それが国際ルール」と主張するが、世界が何と言おうと、こんな迎合の仕方はしてはいけない。

意思表示が大切

 法案に反対するため、元広島市長や大学教授と共に、12日に広島市中区で開いた集会の呼び掛け人の一人となった。

 若い人には、政治は自分に関係ないと思っている人もいるかもしれない。私も同じだった。選挙に行かなくても、政治家に任せておけばなんとかなる、もう戦争なんかしないと信じていた。でも、今はそうではなくなっている。どうやって国を守るのか。私に専門家のような名案があるわけではない。でもしっかり意思は示さないといけない。

 原爆や戦争の恐ろしさを体験した世代が少なくなり、日本は危うい方向に向かいやすくなったと思う。法案は十分審議されていないままなのに、安倍首相は今国会で成立させる方針を崩していない。国民は無関心であってはいけない。(新谷枝里子)

(2015年7月22日朝刊掲載)

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