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広島女学院高生 体験談収録に力 初証言の被爆者も ヒロシマ・アーカイブの動画

 広島女学院高(広島市中区)で、核兵器廃絶に向けた課外活動に取り組む生徒たちが、被爆に関する証言動画や写真を立体地図上で紹介するウェブサイト「ヒロシマ・アーカイブ」の拡充に力を入れている。被爆者が高齢になる中、あの日の記憶と核兵器廃絶の願いを次々に掘り起こし、ビデオに収録。世界に発信している。

 サイトは首都大学東京の渡邉英徳准教授(情報デザイン)が作り、2011年に公開した。核兵器廃絶を訴える街頭署名を続ける「署名実行委員会」が当初から証言の収録や編集に協力しており、現在は1、2年15人が担う。

 18日には、生徒6人が被爆者の川本知(さとる)さん(82)を西区の自宅に訪問。孫で2年の大坪沙羅さん(16)が、人前で語るのは初めてという川本さんの証言を引き出した。

 12歳の時、爆心地から約2キロにあった学徒動員先の自動車工場で被爆し、近くの自宅にいた5歳の妹と3歳の弟は相次ぎ亡くなった―。「国家間の問題は外交力で解決すべきだ」。約1時間の証言をビデオに収めた。

 大坪さんも詳しく聞くのは初めてで「苦しみを本当の意味で分かるのは難しいけど、体験を共有するのは大事と実感した」と話した。証言は約20分に編集し、サイトに載せる。

 実行委は11~14年に23人の証言を収録。ことし2月以降はピッチを上げ、半年で15人分を集めた。1月、収録予定の被爆者が急逝したのがきっかけという。実行委のアーカイブ担当リーダーで2年の中島慧美さん(17)は「本当に時間がないんだと、ショックだった。貴重な証言を一人でも多く聴き、残したい」と話す。

 サイトは現在、中国新聞の連載「記憶を受け継ぐ」で取り上げた被爆者を含む証言計168件を掲載。うち113件は英訳し、今月から公開している。渡邉准教授は「若者の誠実な問い掛けが、体験を他言したことがない人からも新たな証言を引き出している。主体的に聞くことで、その記憶が若者に刻まれ、新たな『語り手』が育つ効果もある」と期待している。(田中美千子)

(2015年7月23日朝刊掲載)

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