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原爆忌 骨の髄まで 傷めらる 俳句に刻む66年

 被爆後、がんなどの病気と闘い続けている福原礼子さん(82)=広島市中区=が被爆体験を俳句に刻み続けている。闘病と次女の死を経て、原爆への怒りと悔しさ、そして「私は生かされている」という感謝の念から、被爆体験を残したい気持ちに駆られたという。

 「原爆忌骨の髄まで傷めらる」。闘病生活を振り返り、最近こんな句を詠んだ。「原爆は死ぬまで人間を苦しめる。この恐ろしさを分かってほしい」。福原さんは言う。

 佐伯郡八幡村(現佐伯区)に暮らしていた。路面電車で出勤途中、西天満町付近(西区)で被爆した。これまでに乳がん、肺がん、大腸がんなど計11回の手術を繰り返した。腹筋や胸筋を切ったため力が入らず、外出には歩行器が欠かせない。

 30代後半から趣味で始めた俳句に闘病や日々の暮らしを映した。師の勧めで2005年4月、句集「生かされて」を出版。あとがきに初めて被爆体験をつづり、記憶の「封印」を解いた。全国から激励の手紙が殺到した。

 07年、次女が脳血腫で亡くなった。そのころから体験を織り込んだ俳句を句会で発表するようになった。国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(中区)にも体験記を寄せた。

 「どんなに手術してもこれまで精いっぱい頑張った。家族や友人に支えられ本当に幸せ」。その喜びも17文字につむぎたいと思う。(野田華奈子)

(2011年8月6日朝刊掲載)

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