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脱原発依存を表明 首相、安全神話「反省」 

 菅直人首相は6日、広島市の平和記念式典であいさつし、福島第1原発事故を受けた今後のエネルギー政策について「原発への依存度を引き下げ、『原発に依存しない社会』を目指していく」と述べた。原子力に頼らないエネルギー政策に転換させる考えを被爆地であらためて示した。

 菅首相は「国のエネルギー政策について白紙からの見直しを進めている。原子力のこれまでの『安全神話』を深く反省する」との姿勢を強調。事故原因の徹底検証と安全性確保の抜本対策とともに、「脱原発依存」に取り組む考えを示した。

 原発の周辺住民や作業員たちの被曝(ひばく)対策にも言及。広島県や広島市、広島大の関係者による放射線量測定や医療チーム派遣などの継続的な支援を紹介しながら、「今なお多くの課題が残されており、今後とも全力を挙げて取り組む」と述べた。

 菅首相は式典終了後、中区のホテルで記者会見し、「脱原発依存」について「私の話したことと政府の方針は、方向性は一致している」と説明した。

 また、菅首相は東区の原爆養護ホーム「神田山やすらぎ園」を訪問。中区のホテルでは、昨年の式典で自ら打ち出した「非核特使」を務めた8人と懇談した。さらに、「被爆者代表から要望を聞く会」に出席。被爆者7団体の代表から原爆症認定制度の見直しや原発事故の被曝者の健康管理の充実などを求める訴えを聞いた。(荒木紀貴)


平和記念式典あいさつ 要旨

菅直人首相

 66年前、ここ広島を襲った核兵器の惨禍を、人類は決して忘れてはならず、二度と繰り返してはなりません。唯一の戦争被爆国として、究極的な核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向け、日本国憲法を順守し、非核三原則を堅持することを誓います。
 わが国は「核兵器のない世界」の実現に向け、国際社会の先頭に立って取り組むと強く決意し、それを実践してきました。志を共有する国々との活動などを通じて、核軍縮・不拡散分野で国際的な議論を主導しています。
 昨年、この式典で「非核特使」の派遣を提唱しました。広島で被爆された延べ17名の方々に、世界各地で核兵器の悲惨さや平和の大切さを発信していただきました。核軍縮・不拡散教育に関する活動を世界に広げていきます。原爆症の認定を待っておられる方々を一日でも早く認定できるよう最善を尽くします。今後とも、被爆者の援護に誠心誠意、取り組みます。
 東日本大震災による東京電力福島原子力発電所の事故は、放射性物質の放出を引き起こし、わが国はもとより世界各国に大きな不安を与えました。
 政府は、事故の早期収束と健康被害の防止に向け、あらゆる方策を講じてきました。広島からも、広島県や広島市、広島大学の関係者による放射線の測定や被曝(ひばく)医療チーム派遣などの支援をいただきました。今なお多くの課題が残されており、今後とも全力をあげて取り組みます。
 エネルギー政策についても、白紙からの見直しを進めています。私は、原子力については、これまでの「安全神話」を深く反省し、事故原因の徹底的な検証と安全性確保のための抜本対策を講じるとともに、原発への依存度を引き下げ「原発に依存しない社会」を目指していきます。
 事故を人類にとっての新たな教訓と受け止め、学んだことを世界の人々や将来の世代に伝えていくことがわれわれの責務であると考えています。
 犠牲となられた方々のご冥福と、被爆された方々並びにご遺族の今後のご多幸を心からお祈りします。


(2011年8月6日夕刊掲載)
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