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戦時の記憶刻む野戦蚊帳 県女の学徒作製 神戸の斉藤さん同窓会に寄贈 平和学習 役立てて 広島

 1945年に、川内村(現広島市安佐南区)の旧陸軍被服支廠(ししょう)分工場へ動員されていた県立広島第一高女(現皆実高)の学徒が作った軍用の蚊帳を、当時の専攻科生、斉藤悠子さん(86)=神戸市北区=が同校の同窓会に寄贈した。被爆70年に合わせて決断。平和学習に役立ててもらう。(和多正憲)

 深緑の麻布と木綿を縫い合わせた蚊帳は縦230センチ、横65センチ、高さ90センチほど。1人用の「野戦蚊帳」で、マラリアなどの感染症対策として、南方の部隊に送られる予定だったとみられる。木綿の裾部分には「昭和二十年製 廣(ひろ)支廠」と記されている。

 分工場へ学徒動員されていた斉藤さんは「もんぺに鉢巻き姿で1日100枚の蚊帳を作った」。あの日は体調不良で休み、古江町(現西区)の自宅で被爆。戦後、不要となった在庫品の1張りを教員に言われて持ち帰り、押し入れにしまっていたという。

 被爆資料を集めている同窓会「皆実有朋会」の呼び掛けに応じ、このほど贈った。斉藤さんは「戦時下で、子どもたちは勉強することもままならず働いた。そんな実態が、戦争を知らない世代に伝われば」と願う。同会は来月22日に中区のホテルである総会で展示後、ホームページ(HP)で写真を公開する予定。事務局Tel082(254)1290。

(2015年7月24日朝刊掲載)

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