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連載・特集

白球が架ける橋 広島からスリランカ <下> 復興支援 サリーで球団グッズ探る

 四半世紀に及ぶ内戦で、大きな被害を受けたスリランカ北部の都市ジャフナ。戦いが終結して6年になるが、家屋やヤシの幹には今も生々しい銃痕が残る。広島東洋カープと国際協力機構中国センター(JICA中国)の一行は、郊外にある漁村の集会所に足を運んだ。

 女性約20人が伝統衣装サリーを再生してこしらえたエコバッグやポーチ、洋服を用意して迎えてくれた。豊かな色彩、光沢が印象的だ。カープの比嘉寿光編成部編成課長(34)は「思った以上に多くの種類がある」と一つ一つ手に取り、デジタルカメラで撮影した。

 サリーを活用してグッズを作れないか―。商品開発の可能性を探るのも、カープのスリランカ訪問の目的の一つだ。

内戦で夫亡くす

 内戦で夫を亡くした女性たちが製作した品々を販売し、彼女たちの収入確保につなげる取り組みがある。NPO法人パルシック(東京都)が進めるサリー再生プロジェクトで、JICAもNPO法人を側面支援する。カープグッズになったサリーが売れれば、女性たちの暮らしの助けになる。

 約7万人が犠牲になった内戦から復興途上にある同国の主要課題の一つは産業振興、雇用確保だ。NPO法人の現地スタッフ伊藤文さん(34)は「プロジェクト参加前、女性の月収は魚の水揚げで得られる千スリランカルピー(約900円)ほど。今では5千スリランカルピー(約4500円)が上乗せされた」と説明する。古着や寄付で手に入れたサリーを加工、付加価値を高めることで、社会的な立場の弱い女性の経済的自立を後押ししている。

 JICAは現地で、他にも荒廃した農地のココナツヤシの木の植樹やピーナツ加工場の技術支援に取り組み、住民の現金収入の確保に努めている。

野球の力を信じ

 今春、スリランカでグラブ製作を目指して会社を設立した日本人がいる。2010~13年に青年海外協力隊員として赴任し、野球の代表チーム監督も務めた渡辺泰真さん(34)=横浜市出身。原材料の革の調達や職人を確保・育成するため、国内を飛び回っている。

 「いばらの道だと分かっている」と語る渡辺さんだが、信念は揺るがないという。「安い用具ができれば野球も普及するし、雇用も生まれる。野球でこの国の復興を応援したい」。野球の力を信じた支援の輪が広がろうとしている。(貞末恭之)

(2015年7月25日朝刊掲載)

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