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平和願い 鎮魂の鐘 こども・遺族代表が鳴らす

 広島の街と暮らしを瞬時に奪った原爆が投下された午前8時15分。遺族代表のパート従業員中根しのぶさん(41)=広島市安芸区=と、こども代表の中野小6年田中翔太君(12)=同区=が平和の鐘を鳴らした。

 カーン、カーン…。曇り空の下、セミの声に包まれた式典会場に、力強く澄んだ音色が8回、響いた。1分間、参列者は黙とうをささげ、犠牲者の冥福を祈った。

 田中君は昨年、学校の授業で初めて原爆資料館(中区)を見学した。爆弾がさく裂した瞬間だけでなく、放射性物質を含む黒い雨の被害に衝撃を受けた。雨に打たれた多くの人を長年にわたって苦しめてきたからだ。

 今、同じく放射線の不安にさらされている福島の子どもたち。世界中で起きている戦争や災害で奪われた笑顔が「一人でも多く戻りますように」との祈りを両手に込めた。

 平和のために自分ができることを考えている。「大人になって子どもが生まれたとき、広島で起きたことを伝えられるようにたくさん勉強したい」

 祖母を原爆で亡くした中根さん。遺骨はいまだに見つからない。「どこかで眠っている祖母たちに祈りが届くよう、未来ある子どもたちの平和のために、心を込めました」と静かに語った。(新本恭子)

(2011年8月6日夕刊掲載)

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