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被曝66年 ヒロシマの訴え 再確認 66ヵ国とEU参列 記念式典

 広島市中区の平和記念公園で6日あった平和記念式典には、原爆を投下した米国を含む66カ国と欧州連合(EU)の大使や公使たちが参列した。各国代表は核兵器廃絶の訴えに耳を傾けるとともに、福島第1原発事故に大きな関心を寄せていた。

 参列国は過去最多だった昨年の74カ国に次ぐ規模。核兵器保有国では昨年に続き米国、英国、フランス、ロシアの4カ国が参列。中国、インド、パキスタンは欠席した。

 英国のデービッド・フィトン駐日公使は式典前日に被爆者の証言を聞いて「心動かされた」と述べ、「英国は核兵器削減に努め、情報の透明性向上を図っている」と自国の立場の正当さを強調した。

 駐留米軍が年末に撤退予定のイラクのルクマン・フェーリ駐日大使は「人類はヒロシマに学ぶべきだ。問題解決に使える武器は対話以外にない」と断言。エジプトのワリード・アブデルナーセル駐日大使は原発事故について「原子力は平和利用でも危険を伴うと再認識した」と述べた。

 原発の是非をめぐっては賛否が割れた。電力の8割近くを原子力に頼るフランスのフィリップ・ジャンビエ・カミヤマ総領事は「温室効果ガス削減のためにも原発は必要」と強調。一方、6月の国民投票で原発再開が否定されたイタリアのマリオ・ヴァッターニ総領事は「代替エネルギー開発に力を注ぐ時だ。日本と技術協力を深めたい」と期待した。(田中美千子、馬上稔子)


臨界前実験批判に無言 米代表 被爆者の証言聞く

 6日の平和記念式典には、原爆を投下した米国からジェームス・ズムワルト駐日首席公使が参列した。昨年のジョン・ルース駐日大使に続き米政府代表の参列は2回目。ただ昨年同様、報道陣の質問に無言を貫き、足早に会場を去った。

 ズムワルト首席公使は式典の約40分前に会場入りし各国代表と和やかに会話を交わした。開式が告げられると表情を引き締めた。松井一実市長が平和宣言で、臨界前核実験を繰り返した米国を名指しする場面があったが、身じろぎもせずに聞き入っていた。

 ズムワルト首席公使は前日の5日、市内に到着。中区のホテルで被爆者の体験証言を聞いた。事前に「核兵器のない世界の実現という目標に向け、引き続き日本と協力したい」との談話も発表した。

 市民の受け止めはさまざまだ。安佐南区の大学1年平本賢司さん(19)は「米国の参列で核軍縮に弾みがつく」と期待する。一方、原爆で伯父夫婦を亡くした中区の主婦谷本幸子さん(76)は「連続参加は歓迎するが、まずは核実験をやめるべきだ」と憤った。(田中美千子、馬上稔子)


脱原発方針は「無責任」 自公トップ 首相発言を批判

 菅直人首相が6日の広島市の平和記念式典のあいさつで「『原発に依存しない社会』を目指す」と表明したことについて、式典に出席した自民党の谷垣禎一総裁と公明党の山口那津男代表はそれぞれ「(退陣意向を表明した)菅首相が進めるには限界がある」「無責任」などと批判した。

 谷垣総裁は式典後、記者団に対し「難しい事柄はトップリーダーの断固たる決意がないと進まない。今の菅首相では限界がある」として、首相の「延命戦略」をけん制した。その上で「できるだけ原発に依存しない方向を目指し、国民生活を支える。この両立を考えることが必要だ」との認識を示した。

 一方、山口代表も同市中区で記者会見し、「遠い将来の政策を縛ることを、退陣表明した首相が口にするのはやや無責任。説得力に乏しい」と指摘した。(城戸収)

(2011年8月7日朝刊掲載)

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