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被曝66年 8・6の首相 「限界」にじむ 被爆者ら評価・苦言

 菅直人首相は広島原爆の日の6日、2年連続で広島市を訪れた。自らの提案で創設した「非核特使」との懇談では成果を強調。平和記念式典で「脱原発依存」を表明し、被爆者団体からエールもあった。ただ、老いる被爆者への援護策で踏み込んだ発言は聞かれず、「検討する」とした非核三原則の法制化の動きはない。1年前と違い、退陣意向を口にした首相の限界もちらついた。

 式典の後、首相は東区の原爆養護ホーム「神田山やすらぎ園」を訪問。入所する被爆者に「長生きしてください」と声を掛けて回った。続いて中区のホテルでは昨年の式典で自ら提唱した「非核特使」の8人と懇談。国内外で被爆体験を証言してきた被爆者の報告をメモを取り熱心に聞き入った。

 首相は「しっかりと体験を伝える重要性について思いを強くした」と発言。終了後は笑顔でねぎらい握手を繰り返した。

 「被爆者代表から要望を聞く会」では七つの被爆者団体の代表と対面。「原子力から再生可能エネルギーへ、という考えを強力に進めてほしい」(広島県労働組合会議被爆者団体連絡協議会の中谷悦子事務局長)などと、「『原発に依存しない社会』を目指す」としたエネルギー政策では評価が相次いだ。

 だが、被爆者の間で「基準が厳しい」との声が強い原爆症認定制度の見直しや、「黒い雨」の指定地域の範囲拡大の要望では様子が一変。

 広島県被団協の坪井直理事長(86)が「政治的な判断でぴしっと出してもらいたい。われわれは死んでしまうから」と迫ったが、首相は「できるだけ迅速な結論が出せるように真摯(しんし)に検討したい」などと述べるにとどまった。

 広島訪問の締めとなった記者会見でも、被爆地が求める非核三原則の法制化には慎重な姿勢を示した。坪井理事長は「回答は具体性がなく、不十分。もっと被爆者の立場に立って考えてほしい」と渋い表情を浮かべた。(門戸隆彦、新山創)

(2011年8月7日朝刊掲載)

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