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連載・特集

『生きて』 児童文学作家 那須正幹さん(1942年~) <9> ずっこけ三銃士 

冒険や事件 コミカルに

 1975年12月、学習研究社(東京)の編集者が来訪する
 学習雑誌「6年の学習」に連載してほしい、という。どういう話がええかと聞いたら、6年生の三人組がいろんな冒険をしたり、事件を解決したり。いってみれば、こども版「三銃士」みたいな物語。コミカルな話にしようという思いがあったから、「ずっこけ三銃士」になった。

 76年4月、連載スタート
 デビュー作「首なし地ぞうの宝」も三人組なんじゃけど、今度は、とにかく一人一人のキャラクターを前面に打ち出そうと思って。第1章は「三人組登場」として、ハチベエ、ハカセ、モーちゃんを、すごくデフォルメして書いた。ハチベエは、書道塾に来よった5年生ぐらいの少年がモデル。目がぎょろっとして、ちょろちょろする子で。ようおやじに怒られよったけど、僕は面白い子じゃと思いよったから。

 それと、僕の得意な話ばっかりを使ったね。お化けが出てきたり、宝探しじゃったり。クイズ番組を題材にしたのは、ちょうどその1年ぐらい前に、中国放送のクイズ番組に僕が出て、全問正解したことがあったから。物語で使うとるのは、あの時の問題じゃなかったかな。

 反響もあった。連載中に編集者が「那須さんすごいですよ。子どもたちは、他の漫画よりも那須さんの作品を読んでますよ」と。

 この連載のさなかに、ポプラ社の若き編集者と出会う
 後に社長となる坂井宏先(ひろゆき)さん(2014年に68歳で死去)。広島に行くので、会いませんかと言われて。「とにかく面白い作品を本にしたい」と言う。こんな作品があるよと連載中の雑誌を送ったら「うちで本にします」と。ところが、待てど暮らせど本にならない。1年余りたった78年2月にようやく出版された。

 送られてきた新刊を見ると、タイトルが「それいけズッコケ三人組」に変わっとる。坂井さんに電話したら「三銃士は古いから三人組に変えた」と。でも、三人組も新しくないんじゃないと言ったら、「『それいけ』を付けたから大丈夫」と言う。

 この本が出て、6月には書道塾を辞めた。前年に結婚したかみさん(美佐子さん)の実家がある防府市に引っ越して、筆一本になった。

(2015年7月29日朝刊掲載)

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