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福島で活動 元原医研・斎藤医師 被災者への医療に全力

 広島の被爆者医療に三十余年をささげた。斎藤紀(おさむ)医師(64)。勤め先を福島市の病院に変えて2年目の春、福島第1原発事故に遭遇した。今、被曝(ひばく)者支援を手掛ける。「人類と核は共存できない」。その思いを強くして迎えた8・6。原点の地、広島市西区で講演した。

 「広島の黒い雨を思い出した」。そう言って示したのは、原発からの放射性物質の拡散マップ。局地的に汚染度が高い「ホットスポット」が生まれていた。被曝線量と健康影響については、チェルノブイリ原発事故(1986年)のデータと比べて解説した。

 宮城県出身で、福島県立医科大(福島市)を卒業。「被爆者と向き合い、医師としての何かを見つけたい」。広島大原爆放射能医学研究所(現原爆放射線医科学研究所)で臨床血液学の研究を重ね、西区の福島生協病院で院長を務めた。

 被爆者医療の蓄積が今回、図らずも生きた。原医研時代の同僚と一緒に、原発周辺の住民15人の尿を検査。内部被曝の証拠も記録した。「調査だけでなく、治療まで責任を負いたい」。相談を受け付ける電話番号を住民に伝えている。

 西区の講演会場―。詰めかけた約180人を前に、自問自答してみせた。「ヒロシマとフクシマが強く手を結ぶためには何をすべきか」  一呼吸置いて自分なりの考えを伝えた。「被爆地がこれまでなぜ原発を許してきたのか、そこを考えないと始まらない」(下久保聖司)

(2011年8月7日朝刊掲載)

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