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原爆ドーム2015 <3> 被爆電車 外観再現 記憶伝える

 「たくさんの人が折り重なって死んでいた」。路面電車内に設置したモニターから、焼け野原の映像と被爆者の声が流れる。乗客約30人が沈痛な面持ちで画面を見詰める。

 被爆当時と同じ紺とグレーに塗り替えられた653号が週末、広島市中区の原爆ドーム前を往復している。70年の節目のことし、原爆の惨状と戦後の復興を伝えるために。

 原爆が投下された午前8時15分、爆心地に近いドーム付近を走る電車の多くは全焼、全壊した。江波(現中区)にいた653号も爆風で大破し、4カ月後の12月に復帰。戦後の市民生活を支えた。当時としては大型車両だった強みを生かし、2006年まで64年間営業運転を続けた。

 整備に携わった広島電鉄(中区)車両課の清水池和彦係長(54)は「しっかり手入れし、走らせ続けたい」。ドームと同じく、あの日の記憶を継ぐために。(藤田智)

(2015年7月30日朝刊掲載)

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