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社説・コラム

『記者縦横』 被爆者団体 次代への芽

■報道部・奥田美奈子

 「後を頼めないか」。被爆者同士が支え合い、70年前の惨禍を後世に伝え、核兵器廃絶を願い続けてきた団体の行く末を、もし、年老いた肉親から託されたとしたら―。私はどうするだろう。

 全国にある121の被爆者団体に今月、組織の現状や展望を尋ねるアンケートをした。会員の高齢化を背景に、3割超はいずれ解散する可能性を示唆。「来年さえ見通せない」と切実な声が集まった。4割は被爆2世たちによる存続を目指すものの、担い手を確保できない団体が多い現実も浮き彫りになった。

 取材を終え、私が2世や3世なら、と考えた。きっと、できない言い訳を繰り返すに違いない。家事も仕事も子育てもある。小学校のPTA行事へ行き、町内会費も集めなければ。とても務まらないと―。

 「現役世代は日常の切り盛りで手いっぱい」。回答用紙からは、子や孫に負担を強いたくないとの思いもこぼれる。しかし被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者(海外在住を含む)の平均年齢はことし、ついに80歳を超えた。「あの日」を知る人たちと手を携えられる時間は長くない。

 アンケートでは光明も見えた。2世会員・組織は、同様の調査をした9年前に比べて着実に増加。近隣の学校や市民団体と連携する試みも始まっていた。「放っておけない、と動きだす人が地域にいると信じたい」。50代の2世の声が胸に刺さる。身の丈の範囲から少しずつ、できることを探さなければならない。

(2015年7月31日朝刊掲載)

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