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亡き友へ「命は私に宿る」 東京の畑谷さん

 「あなたのおかげで今がある。ありがとう」。東京都遺族代表の畑谷由江さん(73)は6日、66年前に被爆した広島市西区横川町を訪れ、自宅付近で一緒に建物の下敷きとなりながら死に別れた友人に手を合わせた。

 「まだまだ由江は頑張っているよ」。畑谷さんは平和記念式典に参列後、横川町の路地で手を合わせ、そっと目を閉じた。3軒隣に住んでいたユキエちゃん。1歳年上で姉のように慕っていた。

 7歳だった畑谷さんはあの日、ユキエちゃん宅を訪ね、玄関で被爆。ともに建物の下敷きになった。ユキエちゃんは家の梁(はり)に挟まれ身動きがとれないのに「由江ちゃん、逃げて」と何度も叫んだ。その声が聞こえたのか母が隙間からはしごを差し入れ、逃げ出すことができた。

 ユキエちゃんは助けてあげられなかった。後悔の念は今も消えない。だが「原爆で亡くなった兄とともに、彼女の命は私に宿っている」とも思う。心臓や肺の病を患ったが、闘う力をもらったと感じるからだ。「あなたの分も幸せに、大切に生きたい」。生かされた命。重みをそっとかみしめる。(山本和明)

(2011年8月7日朝刊掲載)

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