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被爆66年 苦しみ消えることない/生かされた命 毎年感謝

 ◆原爆死没者慰霊行事(平和記念公園)
 広島戦災供養会が主催し、原爆供養塔の前に被爆者や遺族たち約400人が参列した。久保公誉さん(85)=安佐北区=は父と母、弟を弔った。「生かされた命に毎年、感謝している。私は年を重ねたが、3人の若い顔だけが浮かびます」

 ◆広島二中原爆死没職員・生徒67回忌追弔法会(中区中島町)
 旧制広島二中(現観音高)卒業生や遺族たち約350人が参列、慰霊碑に刻まれた犠牲者の名前に触れた。溝上順一郎さん(81)=南区=は「私たち4年生は学徒動員で西区の造船所にいた。後輩たちに申し訳ないと今も思う」と語った。

 ◆広島赤十字・原爆病院原爆殉職職員ならびに戦没職員慰霊式(中区千田町)
 職員や元職員たち約120人が黙とうした。看護婦養成所2年生だった林信子さん(83)=佐伯区=は多くのけが人が来たことが忘れられない。「『水を水を』と叫んでいた人が、翌朝には亡くなっていた」と振り返った。

(南区比治山町)  ◆広島郵便局原爆殉職者慰霊祭
 遺族や職員たち約100人が、慰霊碑のある多聞院で犠牲者288人の冥福を祈った。局員だった父と祖父を亡くした平石允子(ちかこ)さん(74)=安芸区=は「この日が来ると、家族5人で飲まず食わずだった日々を思い出す。苦しみが消えることはない」と思いを述べた。

 ◆国土交通省(旧内務省)原爆殉職者慰霊式(平和記念公園)
 原爆ドームそばの慰霊碑前に、遺族や職員約90人が集まった。新竹春登さん(83)=安芸高田市=は職員だった22歳の姉を亡くした。遺体も見つかっていない。「ここに来ると優しかった姉に会えた気がする」と話した。

 ◆嵐の中の母子像供養(中区中島町)
 広島市地域女性団体連絡協議会の約150人が折り鶴約4千羽と花束をささげた。吉岡恭子会長(68)=安佐北区=は「未来を担う子どもたちのために核兵器の恐ろしさを訴え続けよう」と呼び掛け、「原爆を許すまじ」を歌った。

 ◆県立広島第一高等女学校原爆犠牲者追悼式(中区小町)
 卒業生や遺族、同校の流れをくむ皆実高の生徒たち約250人が、平和大通りの緑地帯の慰霊碑前で黙とうした。姉敦子さんを亡くした山崎友子さん(74)=佐伯区=は「今日は親類たち10人の命日。冥福を祈るのは生き残った私の使命です」と力を込めた。

 ◆郵政関係職員原爆死没者慰霊式(中区東白島町)
 日本郵政グループ広島ビル構内の慰霊碑に遺族や職員たち約150人が集まった。高校2年の孫と一緒に出席した横山幸枝さん(80)=尾道市=は「死にたくないと言いながら死んでいった兄を思い出す」と涙ぐんでいた。

 ◆県被団協(坪井直理事長)原爆死没者追悼慰霊式典(中区基町)
 県被団協会員や遺族たち約200人がメルパルク広島に集まった。学徒動員中に被爆した松井妙子さん(81)=三原市=は、原爆で父を亡くし、母が行方不明になった。「(爆心地近くにあった)自宅の焼け跡から父の背骨が出てきた。供養のためにも被爆体験を語り継ぎたい」

 ◆広島市女職員生徒原爆死没者慰霊式(中区中島町)
 広島市立第一高等女学校の卒業生や遺族、同校の流れをくむ舟入高の生徒約400人が黙とうした。建物疎開中の妹を亡くした卒業生の松岡和子さん(81)=安佐北区=は「多くの命を一瞬に奪った原爆は一生許せない。妹が生きていたらどんな人生を送っていただろう」と目を潤ませた。

 ◆旧制広島市立中学校原爆死没職員生徒慰霊祭(中区小網町)
 卒業生と同校の流れをくむ基町高の在校生たち約300人が参列した。基町高合唱部が旧制市立中の校歌を歌った。生徒会長の2年坂口加奈恵さん(17)=安芸区=は「広島の高校生として戦争の恐ろしさを伝えていく義務がある。亡くなった先輩や先生の遺志を受け継ぎたい」と話した。

 ◆原爆犠牲新聞労働者「不戦の碑」碑前祭(中区加古町)
 遺族や中国新聞社OBら約60人が参列した。姉や弟と訪れた呉市の北山拓路さん(77)は「被爆直後の父は本社に戻って仕事を頑張ろうとしたが亡くなった。原爆は二度と使ってはならない」と力を込めた。

 ◆広島大原爆死没者追悼式(中区東千田町)
 遺族や大学関係者たち約100人が慰霊碑に花と水をささげた。広島女子高等師範学校付属山中高等女学校卒業生の末友智子さん(83)=西区=は「痛い、水をくれと助けを求める声があふれた惨状が焼き付く。絶対に次世代に同じ経験をさせてはいけない」と誓った。

 ◆国鉄原爆死没者慰霊式(中区東白島町)
 遺族やJR西日本社員たち120人が、東白島町の公園にある慰霊碑前で黙とうした。通勤途中だった父を亡くした板倉不二子さん(75)=出雲市=は「優しい父の思い出が浮かんできた。もうつらい思いは誰にもしてほしくない」と願った。

 ◆県動員学徒等犠牲者の会原爆追悼式(平和記念公園)
 遺族や市立広島商高の生徒約300人が参列。生徒会長の同高2年村田真弓さん(16)が「平和を求める心を引き継ぐ」と誓った。被爆で左目を失った犠牲者の会副理事長の寺前妙子さん(81)=安佐南区=は「年々あの日を知る人が減っていく。命ある限り、平和への思いを伝えていきたい」と話した。

(2011年8月7日朝刊掲載)

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