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8・6平和宣言の骨子発表 広島市 核廃絶を世界に訴え 行動理念を提示

 広島市の松井一実市長は31日、記者会見し、8月6日の平和記念式典で読み上げる、被爆70年の平和宣言の骨子を発表した。「絶対悪」である核兵器を廃絶するための行動理念として「人類愛」と「寛容」を提示。世界のリーダーに、相互不信や疑心暗鬼から抜け出し、対話と信頼に基づく安全保障の仕組みをつくるよう訴える。

 宣言前半では被爆の実態に触れる。1発の原爆で広島の暮らし、文化が破壊され、市民とともに朝鮮半島や中国、東南アジアの出身者、米軍捕虜も犠牲になったと指摘。生き延びた被爆者の「広島をまどうてくれ!(元通りにしてほしい)」との叫びを盛り込む。10歳代で被爆した男女2人の平和を願う声を引用。核兵器の廃絶へ「行動を始めるのは今」と、署名や投稿、行進を例に挙げて、市民の取り組みを促す。

 市として、2020年までの廃絶へ、核兵器禁止条約の交渉開始を世界に働き掛ける決意を強調。来年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や広島での外相会合を世界へ廃絶のメッセージを発する好機ととらえ、オバマ米大統領たちリーダーに被爆地訪問を呼び掛ける。日本政府には、条約を含む法的枠組みの議論開始を主導するよう求める。

 一方、参院で審議中の安全保障関連法案には直接言及しない。武力に頼らない幅広い安全保障の仕組み作りと、憲法の平和主義が示す「真の平和への道筋」を世界に広めるよう各国のリーダーに求める。

 松井市長は記者会見で「被爆者は高齢化し、自分たちの言葉で直接訴え掛ける機会が減っていく。その気持ちに沿った訴えを提示したい」と述べた。(和多正憲)

(2015年8月1日朝刊掲載)

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