×

ニュース

安保法案への対応に差 被爆2市の平和宣言骨子 広島、直接言及せず 長崎は慎重審議求める

 広島、長崎両市の平和宣言の骨子が31日発表され、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案をめぐる対応に違いが出た。広島市の松井一実市長が直接言及しないのに対し、長崎市の田上富久市長は政府に慎重審議を求める方針。ただ、両市とも法案の是非には踏み込まない。

 松井市長は記者会見で、法案に触れない理由を「国内の議論を超えて、世界での議論に耐えうる平和の考え方を示す方が宣言として重みがある」と説明。これまで慎重審議を求めてきたとし「被爆者の思いを受け止めてもらえれば、熟議してほしいという気持ちは十分伝わると思う」と述べた。

 一方、長崎市は「政府と国会に向けた安全保障の在り方をめぐる審議について要請」すると明らかにした。市によると、田上市長は記者会見で「法案の是非は述べず、慎重な審議を要請する」と説明した。宣言の起草委員会では、法案に触れるべきだという意見が委員から相次いだという。

 昨年の平和宣言では、集団的自衛権に関して両被爆地の発信ぶりが異なった。憲法解釈を変更して行使を認める7月1日の閣議決定に対し、松井市長は直接触れず、憲法の平和主義のもと69年間、戦争をしなかった事実を強調。「平和国家の道」を歩み続けるよう訴えた。田上市長は、集団的自衛権の単語を盛り込み「(国民の)不安と懸念の声に耳を傾けることを強く求める」と要望した。

 松井市長はこの日の記者会見で、平和宣言の違いを問われ「長崎市は、市長が市民に宣言のベースを考えてもらうスタイルに沿った結論。いずれも核兵器廃絶と恒久平和を願う思いの発信だ」と話した。(和多正憲)

(2015年8月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ