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戦争テーマ公開相次ぐ 「日本のいちばん長い日」「野火」など 史実や基地問題に迫る

 戦後70年の今夏、戦争をテーマにした映画が相次ぎ公開されている。終戦に至る史実を掘り下げた大作や、戦場となった歴史から続く沖縄の基地問題に迫るドキュメンタリー…。「戦争」を過去の出来事で終わらせない作品が並ぶ。(余村泰樹)

 半藤一利のノンフィクションが原作の「日本のいちばん長い日」(8日公開)はポツダム宣言を受諾し、天皇の玉音放送が流れるまでの激動の数カ月に迫る。

 東京大空襲や広島と長崎への原爆投下…。戦局の悪化を受け、鈴木貫太郎首相(山崎努)は政治ルールを破り、死刑覚悟で昭和天皇(本木雅弘)に判断を求める。一億玉砕論が渦巻く中、天皇は降伏を決めるが、陸軍青年将校(松坂桃李)は本土決戦を主張。阿南惟幾陸軍大臣(役所広司)は苦悩の末、部下を欺き、玉音放送の準備を進める。

 戦争を終わらせる難しさが浮かび、「一度始めると止めるのは至難の業。繰り返さないため、じっくり考えるきっかけになれば」と役所。原田真人監督は「軍をなくして国を残した決断が一番のメッセージ。戦争国家をつくるかのようなきな臭い動きがある今、公開する意義は大きいと思う」と強調する。

 塚本晋也監督の「野火」(公開中)は、大岡昇平の実体験に基づく戦争小説を映像化。第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、餓死寸前でさまよう日本兵の姿から、戦争の愚かさをあぶり出す。

 体験者に取材を重ねた塚本監督。そこで感じた「命ある人間が一瞬で物に変わる恐ろしさ」を画面にぶつける。「痛みが薄らぎ、世の中が戦争に向かう中、露骨なくらい直接的に作った。見た人のトラウマになれば」。目を覆いたくなるほどの描写で、忘れてはならない戦争の本質を刻む。

 ドキュメンタリー「戦場(いくさば)ぬ止(とぅどぅ)み」(公開中)は、沖縄県名護市辺野古で進む米軍基地建設を阻止しようとする人々を追う。「標的の村」でも沖縄の基地問題を世に問うた三上智恵監督の最新作。戦後も、基地の島として「戦」に翻弄(ほんろう)され続ける沖縄の人たちの切なる思いをすくい取る。

 庶民生活から戦争を見つめた「この国の空」(8日公開)は、キネマ旬報の脚本賞を5度受賞の荒井晴彦が監督。終戦間近の東京を舞台に、どうせ戦争で死ぬのだと、妻子ある男(長谷川博己)と恋に落ちる娘を二階堂ふみが演じる。

 大賀俊二監督の長編アニメーション「氷川丸ものがたり」(22日公開)は、貨客船として誕生しながら、戦中は病院船として傷病兵を収容し、終戦直後は引き揚げ船になった氷川丸に焦点を当てる。

(2015年8月1日朝刊掲載)

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