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肉親との縁 開催後押し 一緒の連隊に所属/ツルブで戦死… 企画有志「運命的な思い」 福山で企画展始まる

 企画展「ツルブからの手紙」を開催した市民有志。彼らには、それぞれの思いがあった。(加納亜弥)

 はがきの差出人の小林喜三さんは家族で下関市に住んでいた。しかし、1940年2月、備後の郷土部隊である41連隊に配属された。本籍地が尾道市の因島だったからだ
 企画展の呼び掛け人の大学職員宮地弘さん(62)=広島市東区=は不思議な思いに駆られている。4年前に96歳で亡くなった父成樹さんも因島出身。38年5月から40年7月まで41連隊に所属した。福山の兵営にいた期間が小林さんと半年重なる計算になる。

 小林さんの妻の実家も因島で、宮地さんの実家と同じ柿渋製造業者だった。「同郷で柿渋に関わる2人が同じ時期に41連隊にいた。顔を合わせ、言葉を交わしたかも」。そんな縁が後押しした。

 小林さんは42年から約2年、フィリピンとニューブリテン島にいた。愛息にはがきを書き続けた。44年1月、ニューブリテン島西端のツルブで砲弾の破片に太ももを打ち抜かれ、28歳の生涯を閉じた
 宮地さんの呼び掛けに賛同した実行委員会メンバーの神谷和孝さん(75)=福山市西深津町。父の三郎さんはやはりツルブで43年3月、戦死した。大阪出身で小林さんとは別部隊。それでも「運命的な思い。はがきが結ぶ縁を大切にしたい」という。

 同じくメンバーの渡辺良夫さん(80)=尾道市浦崎町=は兄邦夫さんを戦争で失った。当時22歳。海軍航空隊の飛行兵で、42年1月、マレー半島東南の海上で撃墜された。

 渡辺さんはいま、国内外の情勢のきな臭さが気になる。「小林さんは戦地で子どもを思ってペンを握り、その手で武器を持った。わが身に置き換えれば、誰もが戦争に無関心ではいられないはずだ」

(2015年8月2日朝刊掲載)

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