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連載・特集

被爆者の思い伝えたい 児童ら舞台「ヒロシマの孫たち」6日から広島 イギリスの劇団が呼び掛け

 もし、自分が70年前の8月6日、ヒロシマの子どもだったら―。小学生たちの被爆(ひばく)者へのインタビューを基(もと)にした劇「ヒロシマの孫(まご)たち」が6~8日、広島市で上演(じょうえん)されます。イギリスの劇団(げきだん)のメンバーと一緒(いっしょ)に、1年前から準備(じゅんび)に励(はげ)んできた子どもたちを取材(しゅざい)しました。(西村文)

 「もっと、憎(にく)しみの感情(かんじょう)を出して!」。演出(えんしゅつ)家のジョナサン・ペサブリッジさん(61)が英語(えいご)で指示(しじ)を飛ばします。中区であった稽古(けいこ)には、広島市や福山市などの小学生6人が参加(さんか)。中、高生や大人に交(ま)じって、原爆(げんばく)投下直後のシーンを熱演(ねつえん)していました。

 小学生たちは昨年(さくねん)夏、被爆者18人にインタビューしました。「爆風が来て吹(ふ)き飛(と)ばされて。口の中は砂(すな)でじゃりじゃりだった」「お父さんお母さんを一生懸命捜(いっしょうけんめいさが)した」「必死(ひっし)で友だちを引っ張(ぱ)って、がれきの下から出た」「むすびを1個(こ)もらって食べた。なんておいしいんだろうと思ったね」「たくさん人がやってきた。家に泊(と)めてくださいって」…。

 今回の公演を企画(きかく)したのは、イギリスの劇団「ロンドン・バブル・シアター・カンパニー」です。4年前、ロンドンの子どもがお年寄(よ)りから聞き取った体験談(たいけんだん)を基に、「ロンドン大空襲(だいくうしゅう)」を描(えが)いた劇を上演。原爆投下70年の節目(ふしめ)に「広島の子どもたちと、戦争(せんそう)を語り継(つ)ぐ作品を作りたい」と呼(よ)び掛(か)けました。

 「ヒロシマの孫たち」は、小学生が被爆者にインタビューするシーンで幕開(まくあ)け。証言(しょうげん)が進むうちに、舞台(ぶたい)は70年前の広島へとタイムスリップします。「原爆は大昔の出来事だと思っていた」。東区の小学5年藤田響(ふじた・ひびき)君(11)は被爆者に会い、その体験を演じるうちに「自分が同じ目に遭(あ)っていたら」と想像(そうぞう)するようになりました。「あの日」の子どもになりきって、平和への願(ねが)いを発信(はっしん)します。

 公演会場は広島市中区のJMSアステールプラザ多目的(たもくてき)スタジオ。8月6、7日はそれぞれ午後7時、8日は午後1時、同5時の開演。大人1800円、高校生以下(いか)千円。当日券(けん)あり。子どもコミュニティネットひろしまTel082(231)8015。

出演者の意気込み

広島市西区の小学6年 橘高快周(きったか・かいしゅう)君(11)

生きる姿に迫力

 インタビューをした被爆者が笑顔(えがお)で、たくましく生きているのがすごいと思いました。原爆については学校で教えてもらったり、テレビで見たりして知っていましたが、被爆者から聞いた話は迫力(はくりょく)が違(ちが)いました。演技(えんぎ)を通じて、事実の持つ迫力を伝(つた)えたいです。

福山市の小学6年 田城(たしろ)まいらさん(11)

体験知る大切さ

 被爆者のインタビューはとても緊張(きんちょう)しました。私(わたし)の意見と違(ちが)うかもしれないと思っていたからです。でも、お互(たが)いわかり合うことができて安心しました。被爆体験を若(わか)い人が知ることは大事。嫌(いや)な体験を語ってくださった被爆者への感謝(かんしゃ)を込(こ)めて演じたいです。

(2015年8月2日朝刊掲載)

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