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交響曲「ヒロシマ」初演音源、横浜で発見 53年にラジオ放送 丸木夫妻「原爆の図」に着想

 丸木位里、俊夫妻の「原爆の図」に着想を得た、作曲家大木正夫の「交響的幻想曲ヒロシマ 原爆の図に寄せて」の初演音源(1953年)が、横浜市内のTBSの倉庫で見つかった。

 同曲は、「幽霊」「火」「水」「少年少女」など全8楽章で構成し、不協和音を連続させ原爆の惨状を表す現代音楽。発見された音源は、53年11月1日にラジオ東京(現TBS)の番組「コンサートホール」で放送されたが、存在を知られていなかった。TBSホールディングスが音源資料を整理する中で確認した。

 戦前から戦時中にかけて戦意高揚の作品を多く発表し、戦後は一転して反戦の音楽を作った大木。同曲の自筆の楽譜に「(原爆被害の)実相を人類の一人残らずに知らせることは(中略)日本人の人類に対する義務である」などと書き込んでいた。その後改訂し、大木の代表作「交響曲第5番ヒロシマ」として発表した。

 ヒロシマが題材の楽曲収集や活用に取り組む「ヒロシマと音楽」委員会の能登原由美委員長(44)は「ヒロシマを音楽で描写した作品としても、ラジオ放送で多くの人にヒロシマのことを伝えた音楽としてもかなり早い時期の作品。その音源が発見された意義は大きい」と話した。音源は年内に日本コロムビアから発売される予定。(余村泰樹)

(2015年8月4日朝刊掲載)

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