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社説・コラム

『美術散歩』 ヒロシマの顔 敬愛込め

 久保俊寛「鬼籍のヒロシマ伝」 8日まで。広島市中区袋町9の3並木ヒルズ7階、ギャラリー並木

 「最近、肖像画ばかり描いている」と言う呉市出身で、千葉市在住の美術家久保俊寛さん(73)。被爆70年の夏、若き日を過ごした広島で披露したのは、縁のあった物故画家や恩人ら13人の肖像だ。

 「原爆の図」を描いた丸木位里・俊夫妻。広島平和美術展を創設した柿手春三に増田勉、下村仁一、四国五郎。被爆体験を作品に込めた殿敷侃(ただし)や入野忠芳…。広島市街にあった画廊「梟(ふくろう)」の主、志條みよ子の着物姿も見える。

 手元に残る写真や資料から、鉛筆と墨で、敬愛を込めて描き起こした。「並べると、全体で『ヒロシマの顔』を描いたようでもある」と久保さん。ベテラン作家のノスタルジーがこもる展示は、新たな「顔」の出現を促してもいる。(道面雅量)

(2015年8月4日朝刊掲載)

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