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連載・特集

『生きて』 児童文学作家 那須正幹さん(1942年~) <12> 「ズッコケ三人組」完結

「現実との乖離」感じる

 「ズッコケ三人組」シリーズの2巻目「ぼくらはズッコケ探偵団」(1979年刊行)が出たころかな。ポプラ社の営業の部長さんが広島に来て、一緒に食事をしよる時に「先生、ズッコケは何巻ぐらい書くつもりですか」と尋ねてきた。まだはっきり決めてないと伝えたら、「じゃあ5巻ですね」と言う。こっちは、カチンときて「いや、30巻は書けると思いますよ」と返したね。

 最初のころ、ズッコケへの風当たりは強かった。要するに、子ども迎合、売らんかなの本だという評価。20巻目ぐらいになると、ようやく風向きも変わっていった。

 順調に巻を重ね、戦後の国内児童文学最大のベストセラーに
 日本では少年探偵団シリーズが一番長くて、46巻。ならそれを抜いちゃろうと。30巻を出したころから、50巻を目標にした。ただ、やっぱり50巻となると、だんだんネタが尽きてくるじゃない。40巻ぐらいからは、次は何を題材にしようかと、かなりプレッシャーも感じとったね。

 2004年12月、50巻目の「ズッコケ三人組の卒業式」で完結
 60歳を過ぎると、生意気な子どもでもかわいい孫みたいに見えて。僕自身の子どもに対する視線が変わってしまった。それと、ズッコケの世界と現実がだんだん乖離(かいり)して。80年代や90年代は、三人組と似たような冒険がまだできよったからね。まあ、そういうこともあって、やめることにした。終わった時は記念の祝賀会もあって、ちょっとしたお祝いムードじゃったな。

 50巻目を刊行後、東京であった講演会で予期せぬ展開になる
 質疑応答で、ファンが「中学生になった三人組が読みたい」とか言うてくるわけよ。ほいで、こっちも調子に乗って、1冊だけ、皆さんにお礼の意味を込めて大人になった三人組を書きましょう、と応えてしまって。それが「ズッコケ中年三人組」(05年12月刊行)。その後書きに、10年後に50歳になった三人組を書きます、とつい。そしたら、ポプラ社の故坂井宏先(ひろゆき)社長が「10年いうたら、死んどるかも分からんよ。毎年出したら」と、中年もシリーズになった。今度は成長小説で、時代も反映させとる。12月に出す11巻目で3人も50歳。今回で本当に最後よ。

(2015年8月4日朝刊掲載)

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