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被災体験に原爆の惨禍重ね 岩手の高校生「核廃絶を」 長崎で署名活動

 東日本大震災で両親や自宅を失った岩手県陸前高田市の高校生2人が8日、長崎原爆の日を前にした長崎市の街頭で、核兵器廃絶の署名活動に立った。自らの被災体験に原爆の惨禍を重ねる。18日に平和大使として広島市の高校生たちとスイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪れ、平和への願いを届ける。

 「核兵器廃絶と平和な世界の実現を目指す署名に協力を」。JR長崎駅前の広場。陸前高田市の高田高3年菊地将大さん(17)は笑顔で声を張り上げた。

 震災発生時は授業を終え帰宅していた。津波は自宅そばまで押し寄せたが被害は免れた。だが父(49)と母(42)は行方不明に。やっと会えたのは3月下旬。市内の安置所で帰らぬ姿となっていた。

 祖母(75)と2人で暮らし始めたが気持ちの整理がつかない。5月、高校生平和大使を派遣する長崎の市民団体から学校を通じて声が掛かった。「両親のためにもいつまでも立ち止まっていられない」と参加を決めた。

 6月に初めて訪れた被爆地長崎。原爆資料館では親の亡きがらを前に立ち尽くす子どもの写真に自らが重なり、悲しみが込み上げた。同時に核兵器の怖さも知った。「被災したみんなの分まで平和を訴えていきたい」

 菊地さんの後輩の2年佐々木沙耶さん(16)は家族5人とも無事だった。しかし、家は津波が直撃し、思い出が詰まる幼少時の写真も一緒に押し流した。今は陸前高田市内の祖母方で暮らす。「被爆者は生きて体験を語り継いでくれた。私も体験を伝えたい」と話す。

 2人の思いに、広島市安佐南区の可部高3年下岡三都穂さん(17)は「核兵器と災害。命の大切さを訴えるのは同じ」と心を一つにする。3人を含む12人の高校生平和大使は9日の長崎市の平和祈念式典に出席後、スイスへたつ。(岡田浩平)

(2011年8月9日朝刊掲載)

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