×

ニュース

新社長 中国放送(広島市中区)・畑矢健治氏 住民の息遣い伝える 戦後70年関連報道に力

 広島県内で最も歴史が長い民間放送局のかじ取りを担う。「多彩なメディアの中から一番選ばれるチャンネルとなるよう、番組の魅力を高めていく」と意気込む。中国新聞社から3月に移り、青木暢之会長(68)の後任に6月末、就任した。

 中国新聞社の記者時代は、中国山地や瀬戸内海の島々で人の営みを見つめ続けた。若者が都会に流れ、過疎が進んだ状況を年間連載で紹介。「住民の息遣いを伝えるのが報道の役割。地域に寄り添い、課題を掘り下げる姿勢はテレビ局も同じ」。新天地でも現場重視の姿勢を貫く。

 中国放送の設立と同じ年に生まれ、高校時代には深夜放送に熱中するなど「ラジオを聞いて育った世代」。スマートフォンなどの普及で、家族が別々のテレビ番組を視聴できる時代になり「幅広い世代への訴求力を高めることが肝心」と考える。

 就任間もない7月に「ワイドFM」の試験放送が開始。AMラジオを受信しにくい都市部のビル陰などでも番組を聞けるよう、FMで同時に放送する。広島市など県西部で12月に本格放送を始める。「災害時にも情報が行き渡る。市民の力になれるラジオでありたい」と力を込める。

 広告収入は堅調で、2015年3月期の単独決算は2年連続で増収増益だった。そんな中、高画質の4Kテレビの普及など、放送環境は刻々と変わる。変化に対応するための撮影技術や設備投資を課題に挙げる。

 被爆地広島のテレビ局として、戦後70年の関連報道を大きな役割と捉える。昨年1月から復興の歩みなどをテーマに特集番組を続ける。「視聴率競争とは違う観点でやっていく。そうでないとローカル局に意味はない」。被爆体験の証言録など、取材の蓄積を生かす新たな展開を考えていく。

 主催イベントでは広島のにぎわい創出を支える。「歴史のある局だが、新しいことをしなければ置いていかれる」とみる。社員の声に耳を傾けるため、昼休みは社員食堂で食事を取る。「もっと現場の意見を生かす態勢をつくりたい」と穏やかな表情で語る。呉市で家族4人と暮らす。(村上和生)

 ≪略歴≫慶応大文学部卒。77年中国新聞社入社。執行役員編集局長、常務備後本社代表、専務などを経て、15年3月に中国放送顧問。6月から現職。呉市出身。

 ≪会社概要≫本社は広島市中区基町。1952年、広島放送として設立。67年に現社名になった。東京と大阪に支社、福山市に放送局、呉、三次市に支局を置く。資本金3億8250万円。2015年3月期の単独売上高は101億7200万円。従業員は199人(7月現在)。

(2015年8月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ