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祈りの音色 広響「平和の夕べ」アルゲリッチと協演

 広島交響楽団の「平和の夕べ」コンサート(中国新聞社など主催)が5日、広島市中区の広島文化学園HBGホールであった。「Music for peace」を掲げる被爆地のオーケストラが、世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチと初協演。被爆70年の節目に平和の音色を高らかに響かせ、約1900人を感動で包んだ。

 「愛を育み、人を傷つける気持ちをなえさせる」。そう音楽の力を信じるアルゲリッチ。ベートーベンのピアノ協奏曲第1番に信念を込めた。時に繊細に、時に情熱的に。自在に鍵盤をはじき、ドラマチックな調べを紡いだ。オーケストラの熱演と溶け合い、極上の音色が会場に満ちた。

 ベートーベンの劇音楽「エグモント」序曲と協奏曲を届けた前半は第1回定演と同じ内容。音楽監督・常任指揮者の秋山和慶の指揮で平和を希求する原点を示した。最後は、ナチスに古里を追われたヒンデミットの交響曲「世界の調和」で壮大に締めくくった。

 途中、アルゲリッチの次女アニー・デュトワと小説家平野啓一郎が、原民喜の「鎮魂歌」やホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の詩を朗読。悲劇を繰り返さないという思いを共有した。11日には東京のサントリーホールで同じ曲目を披露する。(余村泰樹)

(2015年8月6日朝刊掲載)

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