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社説・コラム

湯崎英彦広島県知事あいさつ(要旨)広島原爆の日式典

 国内外の被爆者の高齢化が進む中、被爆者援護策のさらなる充実に全力を尽くしたいと思います。

 人類史上初めて広島に原爆が投下されてから、ついに70年の月日がたってしまいました。われわれが今いるこの場所だけでも、幾千もの人々が、街とともに焼き尽くされ、尊い命を失いました。今なお多くの被爆者が後遺症に苦しみ、おびえ、地獄のトラウマから逃れられず苦しんでおられます。

 核兵器は永遠に廃絶されなくてはなりません。核兵器があれば安全が守られるというのは、頭の中で作った「理論」にすぎません。一方、広島と長崎が示すのは、核兵器使用の結末という「現実」であります。広島は、「理論」にすぎない「核兵器による安全保障」という神話を、「核兵器による地獄」という「現実」に転換する場所です。

 近年、核兵器廃絶に向けたアプローチをめぐって、核兵器国と非核兵器国との間の溝が深まり、核軍縮の進展を困難にしています。この溝を埋める責任は一義的には核兵器国が負っています。彼らが今すべきは核兵器の近代化などではなく、核兵器に依存しない安全保障を実現するために知恵を絞ることです。非核兵器国は、核兵器国の努力を忍耐強く促し、知恵を貸し、支援することで、溝を埋める責任の一端を担っています。核軍縮の進展が困難な今こそ、全ての人類の英知を集め、状況の打開を図らねばなりません。

 世界の政治指導者に広島・長崎の訪問を呼びかけます。核兵器の非人道性の「現実」を見つめ、全ての核兵器の廃絶に向けた決意を固めていただきたいと思います。

 広島は今、見事に復興を果たし、美しい姿をもって、紛争で苦しんでいる世界の人々に繁栄の希望をもたらしています。この繁栄の礎は、「平和」であることに他なりません。広島は、核兵器を廃絶し、平和を礎にして世界が発展するため、平和の拠点として世界に貢献していきたいと思います。広島が、世界の皆さまとともに行動していくことを誓います。

(2015年8月7日朝刊掲載)

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