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社説・コラム

潘基文国連事務総長メッセージ(要旨)広島原爆の日式典

 この式典は、広島から世界中のあらゆる人びとの心に響き渡り、核兵器廃絶を確実に達成するため、早急に行動を起こす必要があると思い起こさせるに違いありません。

 紛争で核兵器が初めて使用されてから70年が経過しましたが、この粛々とした式典は、あの日亡くなった数万人の方々を追悼するとともに、その後耐え難い苦難を経験してきた被爆者の方々に敬意を払うものです。国連は、被爆者の方々と心を一つにし、核兵器のない世界という被爆者の理想を実現していく決意を固めています。

 私自身、5年前に広島を訪れた際、その思いは一層強くなりました。被爆者の方々とお会いし、被爆の実相や今なお残る影響を目にしたのを一生忘れないでしょう。人類が引き起こしたこの壊滅的な悲劇を生き抜いた人々の勇気に、深く心を動かされました。「被爆者」は単なる生存者ではありません。被爆者は比類なき平和の擁護者です。彼らはその悲惨な体験から、世界の不安化を招くこの無差別兵器が廃絶される日がいつの日か訪れるという希望のメッセージを生み出したのです。

 私は被爆者の方々の勇敢さに敬意を表するとともに、核の脅威のない、より安全かつ平和な世界を実現するというわれわれの共通の大義を推し進めていく決意を新たにしています。

 ことしは国連創設70周年でもあります。国連総会で初めて採択された決議には、原爆の使用に対する世界の憂慮が反映されていました。皆さまが被爆の記憶を継承して下(くだ)さっているように、国際社会も核兵器が廃絶されるまで尽力し続けなくてはなりません。

 皆さまのスローガンに賛同します。「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」

 被爆後数カ月は、「広島には75年間は草木も生えないだろう」と言われていました。70年たった今、活気あふれる広島は、その市民の回復力を証明し、人類の不屈の精神を象徴する都市となっています。広島は世界に勇気を与えており、国際社会は核兵器のない世界を実現することにより広島の経験を生かす責務を負っています。

(2015年8月7日朝刊掲載)

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