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連載・特集

『生きて』 児童文学作家 那須正幹さん(1942年~) <15> 次代へ伝える

平和 継承する努力願う

 被爆から70年の夏を迎えた
 僕の場合、子どもに向けて書く仕事だから、次の世代に分かってほしいという思いが強い。でも、体験のない子どもたちに、どうアプローチをしていくか。戦争の悲惨さをストレートに伝えるよりも、僕は、戦争とはどういうものかを想像してほしいと思う。そのヒントになるような作品を書きたいわけよね。

 安全保障関連法案をめぐる動きを含め、平和や民主主義の根幹が問われている。そうした世相も反映し、来年には、戦争を題材にした新作も刊行する予定だ
 タイトルは「少年たちの戦場」。戊辰戦争の二本松少年隊や、満蒙開拓青少年義勇軍、太平洋戦争末期の沖縄での鉄血勤皇隊などが題材。戦争児童文学は、被害者として子どもを描いた話が多い。でも、実際には加害者の立場に立たされた子どもたちもいっぱいおる。逆に言えば、加害者にさせられた悲劇がある。

 今の子どもたちが、戦闘に加わる可能性だってないとはいえない。その意味で、戦闘に加わった子どもたちの物語も、戦争児童文学として必要じゃないかな。

 「あの日」を前に、1日に広島市内で講演した。絵本「絵で読む 広島の原爆」を手に、子どもたちにこう語り掛けた
 被爆から70年。被爆者もどんどんいなくなるわけです。その時に被爆体験をどうするのか。きちんと正確なものでなくても、いわゆる昔話、民話のような形でいい。今度は、戦争の時代に生まれていない皆さんが、次の世代に伝えてほしい。

 日本は唯一の被爆国といわれますね。被爆国の国民として、何をやらなければいけないか。今後、日本の平和をずっと続かせる。そして、世界で核兵器を使わせない。これが、被爆国の国民の務めです。あの日亡くなった何万という人の魂に報いることにもなると思います。ほんの小さな努力でいいから、取り組んでいってください。=おわり(この連載は文化部・石井雄一が担当しました)

(2015年8月7日朝刊掲載)

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