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安保法案 議論は平行線 被爆者 撤回を迫る/首相 抑止力強調

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の参院審議のさなかに迎えた広島原爆の日。広島の被爆者7団体は6日、同法案を「違憲立法であることは明白」とし、安倍晋三首相に撤回を迫った。首相は「不戦の誓いを守り抜き、戦争を未然に防ぐためのものだ」とかわし、議論はかみ合わなかった。(城戸収、川手寿志、新谷枝里子)

 広島市中区であった市主催の被爆者代表から要望を聞く会。「原爆死没者が安らかに眠れるよう、法案撤回を求める」。広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長(86)は、首相に怒りをぶつけた。

 「丁寧に説明するとしながら『法的安定性は関係ない』など、国民を無視する言動が続いている。法案の内容も手続きも憲法に違反している」と力を込めた。

 要望書では、法案を「長年の被爆者の願いに反する最たるもの」と指摘。「憲法の範囲内」などとしている政府の主張を「詭弁(きべん)」と断じた。

 「平和国家としての歩みは変わることはない」。批判に対し首相は、従来の見解を繰り返した。「万が一の備えを怠ってはならない。国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要不可欠」と法案による抑止力の効果を強調。やりとりは平行線で終わった。

 被爆者側は反発を強める。終了後、広島県被団協の佐久間邦彦理事長(70)は「『万が一』のために何でもできるようにするという。日本が核兵器を持つ可能性もあるのではないかと不安だ」と語った。

 吉岡事務局長は、昨年の「聞く会」でも集団的自衛権の行使を認める閣議決定の撤回を求めた。あれから1年。「首相は聞こえの良い言葉ばかりを言うが、本音がちょくちょく出る。信用できないんですよ」と不満を募らせた。

(2015年8月7日朝刊掲載)

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