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広島原爆の日8・6ドキュメント 平和のともしび5000個点灯/絵本読み聞かせ/英語の体験記朗読会

原爆の実相 自分の目で見て考えることが大切

 0・00 被爆者の木村文彦さん(74)=広島市西区=が長女(46)と孫3人で原爆慰霊碑に手を合わせた。「焼けただれた人が川に入り、亡くなるのを見た」と振り返り、「戦争は二度としてはいけない。孫に平和の大切さを肌で感じてほしい」。

 0・10 会社員高野真理子さん(52)=東京都世田谷区=は、核兵器廃絶と戦争のない平和な世界を願う「広島―長崎」リレーマラソンに初参加。「一歩でも多く平和の気持ちを刻みたい」と長崎市に向けて原爆ドーム前をスタート。

 1・10 大学4年井手優紀さん(24)=福岡県糸島市=は原爆ドーム前で横見靖夫さん(84)=大阪府高槻市=の被爆体験に耳を傾けた。「学校で漠然と習っただけの話を実体験として聞き、戦争の悲惨さをあらためて感じた」とかみしめた。

 2・30 両親が被爆者で、28年前の8月6日に父を亡くした主婦藤本節子さん(60)=西区=は原爆慰霊碑と向き合った。母は現在体調を崩している。「父に、母をまだ迎えに来ないでほしいとお願いした」。涙を拭った。

 3・05 2人の男性が原爆ドームを見上げて語り合う。中国に留学中の大学3年徳林昇剛さん(26)は新潟生まれの台湾育ち。大学で知り合った広島市出身の重山博智さん(22)に誘われ、ドームを初めて訪れた。「原爆の悲惨な実相の一端に触れた。自分の目で見て考えることが大切だと身に染みた」と心を揺さぶられた。

 5・25 呉市の昭和高の放送部員が、1カ月半かけて折った千羽鶴を原爆の子の像にささげた。2年住田瑞妃さん(16)は「私たちは戦争体験を直接聞ける最後の世代。自覚を持ち、次の世代に伝えていかなければ」。

 5・30 「やっと来たよ」。原爆慰霊碑前で、犠牲となった兄と妹に心の中で語り掛けたのは安芸区の沖田ミスヱさん(85)。多忙や足腰が弱くなったため、訪問できなかった。孫の西尾香月さん(37)に誘われ、数十年ぶりに8月6日に平和記念公園を訪れた。

 7・05 「完成した絵を息子に見せて平和について考えてほしいんだ」。呉市の公務員鷹取昌史さん(53)が原爆ドームを見ながら絵を描いた。

 8・15 70年前、上空で原爆がさく裂した島外科内科(中区)の周辺に約30人が集まり、黙とうしたり手を合わせたり。鹿児島市のバスガイド稲留和美さん(50)は「憲法を改正する動きが出ている。これからも戦争がないよう9条を守ってほしい」と願う。

 10・10 広島から世界へ平和メッセージを発信する「ピース・アクト・ヒロシマ」の記帳ブースで、東広島市の広島大4年伊藤真浩さん(22)は「教育者として平和を育む」としたためた。出身地の鹿児島県で教員を志す。平和記念式典にも初めて参列。「黙とうの瞬間は70年前を想像し、身震いした。この経験を子どもたちに話したい」

 11・30 「焼けただれ、血だらけの皮膚が戦争の残酷さを物語っていた」。友人と初めて広島を訪れたフランス人のアドリアン・セジュルネさん(22)=東京都=は原爆資料館を見学後、神妙な面持ちで話した。

 12・25 佐伯区の五日市観音小5年山本芽依さん(10)は、家族や友人と原爆慰霊碑に献花。被爆者の体験談も聞いた。「あらためて戦争をしてはいけないと感じた。戦争のことを知る人が増えれば、平和の輪が広がると思う」

 13・20 原爆の子の像のモデルとなった佐々木禎子さんのおいでシンガー・ソングライターの佐々木祐滋さん(45)=東京都=が自作の「INORI」を原爆ドーム前で披露。「周りの語り部も『70年のことしまで』という人が多かった。命の大切さを受け継いでいくとメッセージを打ち出していかないと」

 14・00 市こども図書館(中区)で、軍拡や原爆を分かりやすく伝える絵本の読み聞かせが始まる。江波小5年柿林凜さん(11)は「戦争は絶対に嫌だね」。母純子さん(48)とうなずいた。

 15・00 英国・バーミンガムから孫と来たリリアン・ワッツさん(72)は、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館で英語の被爆体験記朗読会に参加。「この平和な町に70年前、原爆が落ちたなんて信じられない。ここで聞いたことを帰国して友人や家族に伝えたい」と誓った。

 17・40 日も傾きかけた原爆慰霊碑前に長い列が続いた。原爆資料館も見学した高校1年曽根大輔さん(15)=静岡県藤枝市=は「核兵器の恐ろしさと平和の大切さを感じた。戦争を知っている大人がいなくなる。しっかり歴史を学びたい」と誓った。

 19・00 原爆ドームを囲むように置かれたピースキャンドル約5千個が点灯した。キャンドルには、平和を願う児童たちのメッセージが寄せられた。片山俊男さん(72)=安佐北区=は「子どもたちに平和の大切さを感じてもらい、末永く戦争のない国であってほしい」と灯を見詰めた。(浜村満大、柳本真宏、中間卓也、藤田智)

(2015年8月7日朝刊掲載)

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