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『フクシマとヒロシマ』専門家を養成 広島大「復興学」開設へ

 広島大は23日、原発事故などの被災地の復興に貢献する人材を育てるプログラム「放射線災害復興学」を来年度から始める方針を発表した。福島第1原発事故では放射線の知識を持つ人材の不足が指摘されており、医学や環境学など幅広い分野で復興に役立つ知識を身に付けてもらう。

 同大の大学院生が対象で医歯薬学、工学、教育学など幅広い大学院研究科の学生が履修できる。学生は各研究科に属しながら修士と博士課程の計4、5年間履修する。初年度は最大で10人を予定。その後も最大で新たに10人ずつ受け入れる。

 同大の教員に加え、福島大や福島県立医科大、放射線医学総合研究所(千葉市)の専門家を招いて講義を開く。福島県で放射線量を測定したり、国際原子力機関(IAEA)などで研修したりすることも想定している。

 放射線災害の復興には幅広い分野の専門家が必要なため、医学や環境学、工学、理学、農学、社会学、教育学、心理学などのカリキュラムを用意する。

 浅原利正学長は東広島市のキャンパスで記者会見し「人材を行政や会社に送り出し、放射線災害の被災地の復興に貢献したい」と強調した。(山田祐)


「放射線災害復興学」開設へ 広島大の浅原学長に聞く

 原発事故などの災害の復興に貢献できる人材を育てる「放射線災害復興学」を来年度から始める広島大。福島第1原発事故の課題や復興学を導入する狙いについて、浅原利正学長に聞いた。(境信重)

 ―放射線災害復興学を始める狙いは。
 放射線の知識を生かして原発事故に対応できる人材が極めて不足していることが、福島第1原発事故で明らかになった。現地で被曝(ひばく)検査に携わるスタッフや放射線に詳しい医師が足りないと聞く。医学だけでなく環境学など幅広い専門家の力も要る。放射線の知識を持つ多様な人材を育てたい。

 ―福島県の復興に向け、修了生が果たす役割をどう考えますか。
 肉体的、精神的に不安を抱える住民のケアが必要だ。特に子どもはしっかりフォローしなくてはいけない。そのためには教育学や心理学も必要になる。土木や建築、都市計画での貢献も考えられる。

 ―他にはどんな役割を期待しますか。
 育てた人材が政府や自治体、電力会社で、原発事故に対する危機管理を担うことも考えられる。被災地の復興プランの策定や、原発事故後の被害を最小限に抑える仕組みづくりなどだ。

 ―広島大のどんなノウハウを人材育成に生かしますか。
 原爆放射線医科学研究所(原医研)が進めてきた低線量被曝の研究成果を伝えたい。福島県での放射線量の測定をはじめとしたフィールドワークも経験してもらい、知識を蓄えてほしい。

(2011年8月24日朝刊掲載)

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