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二葉さんの言葉 いつも励みに 福山の江草さん、戦中に演奏同行

 16日に96歳で亡くなった歌手二葉あき子さんから太平洋戦争末期に贈られたサインの言葉を、福山市西深津町の江草八月一日(ほづみ)さん(88)は今も励みにしている。当時、伴奏のアコーディオン奏者として広島県内をともに巡った。文面には「勝つ日、平和の日が来た時に…。いい歌手、いい伴奏をお互い勉強しませうね」と温かい言葉がつづられていた。

 広島市東区出身の二葉さんは1945年7月25日、江草さんが働く因島の造船所を訪れた。空襲で楽団員が到着できず、戸惑う二葉さん。アコーディオンが特技だった江草さんが、伴奏を任された。

 二葉さんは親しみやすい流行歌を披露。江草さんは「大スターなのに高ぶらず優しかった」と振り返る。上司の指示で数日間同行し、福山や呉でも演奏した。サインの日付は7月25日。平和が再び訪れる日を待ち望む言葉の後、「又(また)の日まで頑張って。元気で幸せに」と続く。

 終戦まもなく福塩線の車内で再会し、無事を喜びあった。二葉さんは芸備線のトンネル内にいて原子爆弾の直撃をまぬがれた体験を話したという。江草さんはサインを写真に撮り、絵はがきのように加工して、今も身近に置く。「二葉さんの歌と言葉に励まされて生きてきた」。音楽が結んだ縁に感謝している。(伊藤敬子)

(2011年8月25日朝刊掲載)

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