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世界ジャンボリー山口終了 記者座談会 刻まれた平和学習 全市町で交流 成果

 152の国と地域から集まった少年少女たち約3万4千人が山口市阿知須のきらら浜に集うボーイスカウトの世界大会「世界スカウトジャンボリー」(7月28日~8月8日)が、12日間の日程を終えた。被爆70年を迎えた広島市で平和学習する「ピースプログラム」はスカウトに強い印象を残し、県内全市町を訪ねる「地域プログラム」などで住民との交流の輪が広がった。担当記者が振り返った。

ピースプログラム

 A 主要行事の一つが、平和記念公園(広島市中区)などを訪れるピースプログラムだった。スカウトたちの反応は。

 B ほとんどのスカウトは、最も印象に残った体験に広島訪問を挙げた。6日の原爆投下時刻には、きらら浜で自主的に黙とうする姿も見られた。核兵器の被害の悲惨さが心に刻まれたはずだ。

 C 南アフリカの高校生は「世界各地で資料を展示し、被害の実態を伝えるべきだ」と語った。スカウトは14~17歳とこれからの世界を担う世代。核兵器廃絶を願う被爆者の思いの伝道師として活躍してほしい。

地域プログラム

 B 19市町に出向き、小中高校などを訪問する「地域プログラム」も特色だった。

 D 岩国市の企業は独自に英語版の資料を用意していたし、通訳ボランティアも笑顔で接していた。県民の「おもてなし」は素晴らしかった。

 E 周南市に開所した液化水素ステーションの見学など、県内のものづくりや先端産業の技術力を発信するメニューもあった。

 A ただ主催者側から市町に、訪問する国・地域の内訳が伝えられたのは6月末。参加者数の確定に時間を要したためという。早く決まっていれば受け入れメニューももっと工夫できたし、地元の小中校生も事前学習の時間ができ、より深い交流につながったのでは。山口の魅力が十分伝わったかどうかを含め、その点は残念だった。

開催の意義

 D 県にとって開催の成果は何だったんだろうか。

 C スカウトはきらら浜でキャンプ生活を送るので、地域への経済波及効果は大きくは望めない。一方、関連イベント「やまぐちジャンボリーフェスタ」の開催などで異文化交流のきっかけづくりはできたと感じる。

 E でも、交流した住民や小中高生たちは一部。それ以外の人にとって、ジャンボリーの熱を感じる機会はほとんどなかった。

 A 県内から参加したスカウトはスマートフォンを片手に外国人スカウトと語り合い、フェイスブックで連絡を取り合っていた。これからも息の長い交流が期待できる。

 B 県内で過去最大規模の国際イベントを、大きな混乱なく終えた県や県教委の支援態勢は一定に評価できる。大会を一過性に終わらせず、経験を人材育成や外国人観光客の呼び込みにどう生かすのかが問われる。

(2015年8月10日朝刊掲載)

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