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[戦後70年 継承しまね] 平和願い「原爆対局」再現 「あの日」広島で本因坊戦 故岩本九段 出身地益田でセミナー

 日本棋院理事長を務めた益田市出身の故岩本薫九段(1902~99年)が、原爆投下の当日に五日市町(現広島市佐伯区)で対局した本因坊戦をテーマにしたセミナーが9日、益田市立図書館であった。日本棋院益田支部の主催。参加者は、岩本の日記や対局の再現を通し、平和について考えた。(江川裕介)

 橋本宇太郎本因坊との6番勝負の第2局で「原爆下の対局」として知られる。材木町(現在の平和記念公園)であった7月下旬の第1局に続き、五日市町で8月4日から6日まで開かれた。原爆の爆風で会場のガラスが割れるなどの被害を受ける中の対局で、岩本氏が敗れて1勝1敗になった。

 セミナーには支部員たち23人が参加。大庭信行普及部長(44)が、益田市立歴史民俗資料館所蔵の岩本氏の日記を紹介しながら当時の状況を説明。「強烈な光線で爆風が起り、ガラスなど飛んだ/市中に火の手が上り、夜も燃えさかってゐた/こちらに居て命拾いをした」などの記述を紹介した。

 日記は7日以降、広島の関係者の死を悼む記述が続く。対局はその後延期となり、終戦後の翌年8月、岩本氏が最終的に勝利した。一連の対局は、解説用の大盤を使って、会場で再現された。

 田原俊平幹事長(65)は「被爆70年の節目に、囲碁を楽しめる平和な社会のありがたさを再確認した。囲碁史に刻まれた対局を後世に伝えたい」と話していた。

(2015年8月10日朝刊掲載)

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