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旧日本兵ヘルメット 供養 米の音楽家 ベイ=ローレルさん 宮島の大聖院 父保管 戦後70年で持参

 米アリゾナ州の音楽家アリシア・ベイ=ローレルさん(66)が、第2次世界大戦中に米軍の軍医だった父が太平洋戦線から持ち帰った旧日本兵のヘルメットを、廿日市市宮島町の大聖院で供養した。持ち主が分からないまま手元に置いていたが、終戦70年の節目に日本に「里帰り」させ、戦争で犠牲になった命を悼んだ。

 外科医だった父、ポール・カウフマンさん(1910~2007年)が、太平洋のある島に従軍した時だった。戦闘が途切れ、負傷兵がいないか捜していると、一つ星の付いたヘルメットが落ちていた。旧日本兵のものだった。周囲に持ち主は見当たらない。手に取って母国に持ち帰った。

 ベイ=ローレルさんが初めてヘルメットを見たのは7、8歳のころ。自宅の本棚に置いてあるのを見て、父に尋ねた。戦地に赴いた話を興味深く聞いた。父は「危険を顧みず、なぜ持ち帰ったのか自分でも分からない」と答えていたが、戦後も大切に保管していた。

 ヘルメットはその後、芸術家の母がベトナム戦争に反対するため作った、枯れ葉剤で皮膚がただれた兵士の像にかぶせられた。「私には一つのヘルメットにすぎないが、両親には戦争をダイレクトに感じさせる象徴だったのだろう」

 いつ、どこで拾ったのか具体的に言わぬまま父は逝った。ヘルメットを引き取ることになり、「里帰り供養」を決めた。平和コンサート出演のため広島市を訪れた今回、世界遺産の宮島で弔うことにした。9日あった法要。読経が始まるとむせび泣いた。「70年さまよっていた持ち主の魂が戻ってきたかのよう」。20分間ずっと手を合わせた。

 今後は、知人を通じて知り合った三次市の西光寺で保管してもらう。「やっと弔えてうれしい。私たち人間は家族のようなもの。お互い理解し合えば戦争は起きない」。平和を願い力を込めた。(山本祐司)

(2015年8月11日朝刊掲載)

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