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行政、今後の行方注視 憤る市民団体 経済界は評価 中国地方 川内原発再稼働

 九州電力川内原発1号機が再稼働した11日、脱原発を訴える中国地方の市民団体などから安全性への懸念が相次いだ。一方、経済団体からは電力コストの軽減につながるとの期待が聞かれた。中国電力島根原発(松江市)がある島根県は今後の行方を注視する姿勢を示したが、隣接する鳥取県は「原発再稼働の手続きでは、周辺自治体の意見も聞くべきだ」と注文した。

 原発に反対する中電株主でつくる市民グループ「脱原発へ!中電株主行動の会」の木原省治世話人は「原発がなくても電力の供給は足りているのに動かす理由はない」と強調。島根原発2号機の再稼働に反対する市民団体「さよなら島根原発ネットワーク」の杉谷肇共同代表は「福島の原発事故の原因究明が進まないまま、再稼働することに、疑念と憤りを感じる」と語った。

 中電が上関原発の建設を計画する山口県上関町でも不安の声が上がった。「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の清水敏保代表は「事故が起きた場合の責任は誰が持つのか曖昧。反対の声を無視した、ごり押しの再稼働だ」と怒りをあらわにした。

 これに対し、経済界からは再稼働を歓迎する意見が続いた。広島経済同友会の森信秀樹代表幹事は「電力コストの高止まりが解消される」と期待。中電会長でもある中国経済連合会の山下隆会長は「再稼働を前向きに評価する。他の原子力発電所もできるだけ早く再稼働を」とコメントした。

 まつえ北商工会(松江市鹿島町)の青山正夫筆頭理事も「国民の原発への信頼が得られるように、安全に運転してもらいたい」と川内原発の再稼働を前向きに受け止めた。

 自治体や議会の反応も分かれた。上関町議7人でつくる原電推進議員会の海下竜一郎会長は「原子力の火が再びともったのは大きな一歩」と語った。

 川内原発の再稼働について、松江市の松浦正敬市長は「地元が対応した上でのことなので、特に言うことはない」とした。島根県の溝口善兵衛知事は「今後の原子力規制委員会や九州電力の対応を注視していく」とコメントした。

 しかし、原発30キロ圏に米子市と境港市が入る鳥取県の平井伸治知事は「今回の再稼働へのプロセスが、他の地域のプロセスを規格化するものであってはならない」と指摘。島根原発2号機の再稼働をめぐっては「周辺も含めた地元の意見を聞き、安全を第一義として慎重に判断すべきだ」と求めた。

(2015年8月12日朝刊掲載)

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