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社説・コラム

『やまびこ』 孤児の戦後 心に響いた

 「戦後、生きたくても生きられなかった孤児の歴史に目を向けてほしい」。70年前、三次市廻神町の善徳寺で学童疎開していた川本省三さん(81)=広島市西区=の言葉が心に響いた。

 先日、県北面で連載した「たどる戦争の記憶」。疎開中に食べるものがなかったひもじさや、11歳で両親ときょうだいを原爆で失い孤児として戦後を生き抜いてきた苦しみは想像を絶するものだった。

 空腹で石ころをしゃぶったまま死んだ子、やくざに雇われ、なんとか日々を食いつないでいた子…。自身の体験と重ね、仲間の無念を代弁しているようだった。

 孤児にとって「戦後」とひとくくりには語れない70年間の記憶。当事者の口から語られる言葉は重い。川本さんの講演をじっと聞き入っていた三次の子どもたちの心にもきっと響いたに違いない。(野平慧一)

(2015年8月12日朝刊掲載)

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