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戦中の教練日誌 訓練克明に 福山の元校長石崎さん 警戒前進や射撃 図で記録 遺族が寄贈へ

 福山市の小中学校で校長などを務め、1998年に80歳で死去した石崎顕夫さんが、県師範学校(現広島大)を38年に卒業後、短期現役兵のころに書いた教練日誌を、遺族が保管している。広島大文書館は「師範学校の卒業者への訓練が具体的に分かり貴重」と評価。遺族は戦後70年の節目に同文書館へ寄贈する。(榎本直樹)

 縦約20センチ、横約16センチの180ページのノート。38年6月1日~8月18日の訓練を151ページまで克明につづる。広島市のJR広島駅北側にあった東練兵場での演習は、隊員配置や敵を警戒しながらの前進などを手描きの図付きで記録。射撃訓練、地雷の仕組みに関する座学の記述もある。

 7月11日は戦没者の遺骨を乗せた列車を迎えた。戦地に赴く兵士が通っても誰も万歳しないなど、静まりかえった様子を次のように記す。

 「両手ヲ合ハセテ英霊ヲ弔フモノ、サテハハンカチヲ眼ニアテヽカスカニ歔欷キノ聲ヲモラシテヰル、サソハレル様ニ自分モ一汐眼ノ奥カラアツイ雫ノニジミ出ル感ニセマラレタ、一語ヲ発スルモノナク雑踏ノ街モ水ヲウッタ様ナ静ケサデアル」(原文のまま)

 石崎さんは井原市で生まれ育ち、誠之館中を卒業。38年3月に県師範学校本科第2部を卒業後、広島歩兵第11連隊へ短期現役兵として8月まで入隊した。小中学校で教壇に立ち、福山市神辺町の竹尋小校長を最後に退職した。

 日誌は約10年前、石崎さんが生前使った本箱にあるのを次女尚子さん(68)が見つけた。「まじめで口数の少ない父だった。後世に父の記録を伝えたい」と寄贈を決めた。

 同文書館によると、県師範学校は38年時点で現広島産業文化センター(広島市南区比治山本町)付近にあった。38年6月1日時点で366人が在籍。41年、現広島大付属東雲小・中(南区東雲)の場所に移った。

 同文書館の石田雅春助教(39)は「所蔵資料に類似の物はなく、情報量も豊富だ」とし、寄贈を受けて文書館の目録に登録する方針でいる。

(2015年8月12日朝刊掲載)

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