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米の原爆演劇で初の被爆証言 西区出身ロス在住の松林さん

 広島市西区出身で米ロサンゼルス在住の被爆者松林幹雄さん(72)が15~17日、原爆開発をめぐる演劇が上演されるアイオワ州の劇場で被爆体験を語る。松林さんが公の場で証言するのは初めて。会場には被爆の惨劇を伝える写真も展示する。

 演目はブロードウエーで上演された「コペンハーゲン」。ナチスドイツで原爆開発に関わったハイゼンベルクと米マンハッタン計画に参加したユダヤ系デンマーク人ボーアの2人の物理学者が、探求心や功名心、兵器開発への倫理観の間で葛藤(かっとう)する心理を描く。松林さんは上演後、被爆後の広島の惨状や米国での半生を語る。

 上演する同州の芸術団体理事長が知人の松林さんに証言を依頼。これまで友人や家族以外に話したことはなかったが、被爆66年が過ぎても米国人の多くに被爆の実態が理解されていないと感じていたことから承諾した。

 松林さんは爆心地から約4キロの庚午町(西区)の自宅そばで被爆。親類を捜すため2日後に市中心部に入った。大やけどを負い水を求める人であふれた光景が忘れられない。

 舟入高を卒業し1958年、米国に移住した親類を頼りカリフォルニア州の大学に留学。日系企業の駐在員や会社経営を経て大リーグなどプロスポーツ界でマーケティングの仕事をしている。

 松林さんは「原爆は何の罪もない市民に使われた。核兵器は地球上からなくすべきだ」と強調。同時に人生の多くを過ごした米国への愛着や感謝の思いも伝えたいとしている。 (金崎由美)

(2011年9月2日朝刊掲載)

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