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中国地方は評価分かれる 70年談話「好印象」「本質触れず」 核廃絶徹底求める声

 安倍晋三首相の戦後70年談話。安全保障関連法案の国会審議が進み、右傾化の懸念が高まる中での発表となった。被爆から70年の節目でもある。中国地方の市民の評価は分かれた。

 「戦争は二度としてはならないと何度も明言していた。ほっとした」。戦争で夫を亡くした松江市の上沢道子さん(95)は首相談話を評価した。「子も孫もひ孫も戦地に出したくない」と願う。宇部市の会社社長河口隆さん(39)も「二度と同じ過ちを繰り返さない決意表明を国内外に向けてできた」と前向きに捉えた。

 在日韓国人で広島韓国商工会議所会長の徐健杓(ソコンピョウ)さん(62)=広島市南区=は「おわび、侵略などのキーワードに触れ、従軍慰安婦への言及と思われる表現もあった。好印象だった」と話した。

 中国残留孤児で20年前に帰国した中村美智子さん(81)=安佐北区=も「中国人の寛容の心に触れてくれた。日中関係や国際情勢など難しいことはよく分からないが、私のような苦労を子どもたちにさせたくない」と願った。

 反対の受け止めも。安倍首相は「国際秩序への挑戦者となった過去を胸に刻み続ける」と述べた。中国から広島大大学院に留学している蘇振軍さん(30)=東広島市=は「挑戦者という言葉には前向きなニュアンスを感じる。おわびの気持ちはあまり感じられない」と残念がった。尾道市の喫茶店経営山口真悟さん(44)は「反省を盛り込んだが、何が原因で戦争が起きたかという本質的な部分に触れていない」と指摘した。

 安倍首相が安保関連法案の成立を急ぐ姿勢からも懐疑的な声が上がった。子育て中の福山市の会社員伊藤香織さん(35)は「安保関連法案は子どもが戦争に行く可能性があるように思える。談話で戦争を繰り返してはならないと強調しているが、首相の言葉は真実味を感じなかった」と首をかしげた。

 安倍首相が「戦争に関わりのない世代に、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と触れた点でも評価が分かれた。周南市の会社員石光須美恵さん(50)は「子どもの世代に引き継がれず、安心した。政府の共通認識であり続けてほしい」と捉えた。一方、広島県府中町の会社員弓場則子さん(42)は「もう謝ったからいいだろう、というニュアンスを感じた。中国や韓国の人が謝罪と受け止めるだろうか」と話した。

 談話は核兵器の不拡散と廃絶にも触れた。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(73)=北広島町=は「戦争、核兵器は絶対いかんという姿勢を貫き通してほしい」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(70)=広島市西区=は「被爆国として原爆を投下した米国をはじめ世界に核兵器廃絶をもっと訴えてほしかった」と話した。

(2015年8月15日朝刊掲載)

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